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【シドニー駐在員 幸田 太 11月14日発】 連邦政府は11月6日、干ばつにより 被害のあった農家に対し特別災害支援(Exceptional Circumstance)を適用する と発表した。特別災害支援は、干ばつだけでなく、例外的な災害時に発動される 支援措置であり、今回の場合は、干ばつの被害が深刻で平行して各州の地域農政 委員会が特別災害支援地域と認めた地域に在住する農家に対して交付される。 さらに、18才以上であること、豪州国民であり、豪州に在住していることが受 給条件となっている。 この特別災害支援については、今年5月の全国第一次産業相会議において、従 来からの連邦政府の対策を強化するための財源について提案され、その財源の負 担割合をめぐり連邦政府と州・準州政府で意見が分かれ、議論は頓挫していたも のである。 この負担割合については、10月10日の同会議において、再度連邦政府が、初年 度において連邦政府9割、州政府1割、次年度において連邦政府5割、州政府5 割で2カ年にわたり各州ごとに実施することを提案した。 干ばつの被害が深刻なNSW州およびクインズランド(QLD)州は、11月13 日に連邦政府再提案の補助金負担割合について他州に先行して了承した。 要件を満たした者に対しては、連邦政府は、Centerlink(家族・社会サービス 省の外郭団体で生活に対する支援事業を行なっている。)を通じ補助金を交付す る。交付される補助の内容は次のとおり。 ・新たなスタートに向けた支払(Newstart Allowance): 新たなスタートに向けた支援として、2週間当たり最高405豪ドル(約28,350 円:1豪ドル=70円)を補助 ・パートナー支払(Partner Allowance): 新たなスタートに向けた支払いに配偶者分を加算し、2週間当たり最高348豪 ドル(約24,360円)を補助 ・国民健康保険カード(Health Care Card): 国民健康保険料の補助 となっている。 連邦政府の発表によると現在、NSW州、QLD州で1,300戸の農家に対して 支払いが開始され、今後1,000戸が申請を予定している。今回の干ばつにより近 年、最も被害のあった94年より悪い場合、連邦政府は今後の支払いは2億豪ドル (約140億円)になる推計している。また、併せて連邦政府は、10億豪ドル(約 700億円)を干ばつのための予算を別途確保している。 干ばつに対する各業界の最新のコメント ○ MLA(豪州食肉家畜生産者事業団):干ばつによる飼料不足により、家畜 のと畜が増加し、総飼養頭数28百万頭から27百万頭まで落ち込む可能性があ り、今後の牛群形成に影響する恐れが出てきている。 ○ ALFA(豪州フィードロット協会):乾牧草、穀物価格の高騰が続いてお り、コスト増により、今後100ヵ所のフィードロットが閉鎖の危機に瀕して いる。 ○ APL(豪州養豚公社):穀物の高騰は平均的な家族経営養豚で週3,000豪 ドル(21万円)のコスト増となっており、輸入穀物の検疫条件の緩和を政府 に求めている。 ○ ADC(豪州酪農庁):豪州の9月生乳生産量は前年比1.6%減、110万680 キロリットルとなった。 7〜9月の合計も257万1,200キロリットルとなり0.9%減少となった。 ○ 牧草輸出業者(WA州) WA州とSA州は10月に少量の降雨があり、干ばつではあるがNSW州、V IC州に比べれば影響は少ない。日本向けの牧草は、WA州、SA州で調達 するので、品薄感はあるものの供給は継続できる。国内流通用牧草の主産地 であるNSW州、VIC州は手当てができないか手当てができても品質的に 良質の物は望めない状況で事態は深刻である。
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