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【ワシントン駐在員 道免 昭仁 11月14日発】 米保健社会福祉省(HHS)のト ンプソン長官は11月4日、近年、シカやエルク(オオジカ)に発症する慢性消耗性 疾患CWD:Chronic Wasting Disease:)が米国内で広がりつつあることを踏まえ、 この疾患の人間への危険性などについて食品医薬局(FDA)が調査を開始すると発 表した。トンプソン長官は会見で、「CWDがわれわれに脅威を与えるものかどうか 見極めた上で、疾患の拡大を食い止める最善の策を探し出し、CWDの撲滅に奮闘し ている州を支援したい」と述べた。 67年に最初の患畜が確認されたCWDは、78年に伝達性海綿状脳症(TSE)の一種 であると特定された(既報「海外駐在員情報(通巻533号)」参照)。当初は、コ ロラド州北東部やワイオミング州南東部などに生息する野生のシカやエルクだけ に発症していたが、97年、サウスダコタ州の農家で飼養されていたエルクからも 発見されている。さらに、イリノイ州政府が11月1日に、10月下旬に狩猟された野 生の雌シカがCWDであったと発表したことから、発生州は10州となった。 調査は、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の TSE研究 予算から2,920万ドル(35億4百万円、1ドル=120円)が充当され、実際には、NIH の研究機関の1つである国立アレルギー・感染病研究所(National Institute of Allergy and Infections Diseases:NIAID)などが行うこととなっている。調査 は、CWDの感染メカニズムや発生原因となる異常プリオン(たんぱく質の一種)の 特定や異常プリオンが含まれる餌の摂取により、サルなどの実験動物がCWDに感染 する可能性などについて実施される予定である。なお、HHSは、これまでシカとの 接触やそれらを食べたことにより人間がCWDを発症した事例はないとしている。 また、NIAIDは先ごろ、コロラド州立大学と840万ドル(10億8百万円)、7年間 の契約を結んだ。この契約の下で、CWD専門の研究センターを設立し、治療法や ワクチンの研究などを行うこととしている。 一方、米農務省(USDA)は、97年から各州の協力も得てサーベイランスを行っ ており、2003年度においてもCWD撲滅プログラム予算が計上されているところで ある。また、USDAは、連邦議会からのCWD対策強化の要請を受け、米内務省(DOI) との間で作成したCWDマネージメントプラン(CWDの診断方法、個体管理の重要性、 サーベイランスの強化、発症事例などについての情報の共有など)を提出してい る。 こうした中、FDAの動物用医薬品センター(Center for Veterinary Medicine: CVM)は11月12日、CWDの発生が増加していることや感染のしくみが不明であるこ となどから、@CWDに感染した、あるいは感染している確率の高い動物を原材料 に用いた動物用飼料は認めない、Aこれらの原料が含まれる動物用飼料は市場か ら回収されるという規則を新たに導入すると発表した。さらに、この発表に関し ての「実施説明書」を後日公表するとしている。なお、2001年10月以降、日本は 米国およびカナダから日本への生きたシカ科動物および同科動物由来の畜産物の 輸出を停止している。 発生が確認されていないケンタッキー州では、他州からのシカの移動を禁止す る規則を制定するなどの動きもある。
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