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アルゼンチンで14年ぶりに農林業センサスを実施


【ブエノスアイレス 玉井 明雄 10月2日発】 国家統計局(INDEC)は9
月下旬、アルゼンチンの農林業に関する最も基本的な統計調査である農林
業センサス(以下、「センサス」という)を開始した。このセンサスは、
88年を最後に実施されていないことから、14年ぶりとなる。

  調査の方法は、すべての農林業経営体(EAP)を対象とした調査であ
り、全国を@パンパ地域、A北東地域(NEA)、B北西地域(NOA)、
C中部半乾燥地域(クジョ地域)、Dパタゴニア地域の5地域に分けて実
施される。

  EAPとは、同一州内に 500平方メートル以上の土地を有し、販売目的
の農業、畜産業、林業を営む経営体である。また、EAPには、自家消費
や研究目的で生産を行い、余剰生産物を市場へ販売するものも含まれる。
なお、88年のセンサスによると、EAPの総数は約42万1千戸である。

  同国では、98年にセンサスの実施が予定されていたが、北東地域におい
て大洪水が発生し、水害対策に多くの国家予算が費されたことや、水害に
より調査の実施自体が困難となったことなどから実施は見送られてきた。
なお、センサスのいくつかのデータを更新する目的で、93年から2001年ま
での間、国家農業アンケート調査(ENA)が毎年実施されている。

  今回のセンサスの目的は、@88年のセンサスをベースにしたEAPの構
造に関する諸統計の更新、AEAPの台帳の更新、B国家予算の算定に必
要な統計情報の入手、CEAPの組織またはインテグレーション形態の把
握などである。

  センサスを実施するメンバーは、INDECから選出される国のコーデ
ィネーター1名、各州から1名づつ選出される州のコーディネーター23名、
主要州から副コーディネーター13名、主任監督官88名、監督官520名、調
査員 2,730名で構成されている。監督官は、EAPを対象とした悉皆調査
を行う調査員の指導などに従事する。

  今回の調査は、EAPを対象に次の13項目から構成されている。@経営
体および生産者の識別(名称、住所など)、A経営体の法律上の分類、B
土地の所有形態、C用途別土地面積、D農作物の栽培方法、E畜産業(飼
養頭羽数など)、F農林業に付随した商業活動(観光農場など)、G建造
物・設備、H機械・機材・車両、I住居数・世帯者数・就業者数、J経営
手法、K生産物の販売先、L農地の所在・経営体の見取図など。

  調査対象地域の1つであるパンパ地域の調査票を見ると、今回の調査項
目は、88年と比べ、前段のF、K、Lが新たに追加されている。また、調
査項目の内容を比べると、Dでは、不耕起栽培法を用いた農作物別作付面
積、綿花・大豆・トウモロコシの遺伝子組み換え種子の利用状況、有機農
産物の認定の有無、農作物別のかんがい面積、Eでは、各家畜についてそ
れぞれの目的別飼養頭羽数(牛のフィードロット頭数など)、また、牛で
は、肉牛・乳牛別の飼養管理・衛生・繁殖技術、家きんでは、生産システ
ムの独立系・インテグレーション系の区分、Gでは、搾乳施設の明細など
が新たに加えられている。

  前述の通り、これまでセンサスは88年を最後に実施されていないが、パ
ンパ地域の穀倉地帯に位置するペルガミノ地区で99年、試験的な調査が実
施された。この結果によると、同地区のEAPは、88年比で24.2%減の
1,216戸と大幅に減少する一方、EAP が所有・占有する土地面積は、同
年並みの 約28万5,500へクタールとなっており、1経営体当たりの規模拡
大が進んでいることがうかがえる。

  INDECによると、9月下旬から開始されたセンサスは、11月下旬に終
了する予定である。また、同調査の速報は今年12月に、最終的な結果は来
年5月に発表される予定であるが、88年以降、同国における農林業の生産構
造がどのように変化したかなど、センサスの結果が注目される。
 
    

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