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EU委、直接支払いの受給額階層別資料を公表


【ブラッセル 山田 理 10月3日発】 EU委員会は10月1日、2000年度
における直接支払いの受給額階層別の戸数、交付金額に関する資料を公表
した。これは、加盟国からの報告を基に作成され、欧州議会の予算管理委
員会、予算委員会および農業委員会に提出されたものである。

  EUの農業政策は長い間、農畜産物の介入買い上げによって最低価格を
支持することで、間接的に農業収入の安定化を図ってきた。しかし、介入
制度への財政支出の削減や域内価格の引き下げによる国際競争力の強化の
ため、92年以降、介入価格の引き下げが段階的に行われ、その代償措置と
して直接支払いが導入・拡充された。現在では、穀物、肉牛、羊など多く
の品目で直接支払いの制度が存在し、EUの農業政策の中で重要な位置を
占めている。

  EU委員会は先般、共通農業政策(CAP)の中間見直し案を公表した
が、この中で、現行の品目別の直接支払いを単一の直接直接支払いへ統合
するとの提案がなされており、今回公表された資料は、この審議も念頭に
おいて作成されたとみられる。

  直接支払いは、加盟国が直接または団体等を通じて農業者に交付されて
いるが、すべての加盟国が農業者ごとに各種直接支払いの総額を管理する
システムを保持しているわけではない。このため、ギリシャにおける穀物、
家畜以外の品目に対する直接支払いのデータは揃っていない。

  2000年度のEU14カ国におけるすべての直接支払いに関する農家ごとの
支給状況を見ると、戸数の最も多い階層は、0ユーロ以上 1,250ユーロ
(約15万円:1ユーロ=120円)未満で、全体の 53.76%を占める。一方、
30万ユーロ(約3,600万円)以上の直接支払いを受給した農家は 0.04%の
約 1,900戸となっている。また、上位5%の農家が受給する直接支払いの
合計金額は、全体の約50%に上っている。

  品目別の直接支払いでは農家が受給できる上限が定められているものは
あるが、直接支払い全体での規制はない。中間見直し案では、農家ごとの
直接支払い受給額の上限を30万ユーロとすることが提案されている。

  加盟国別に見ると、戸数の最も多い階層は、イタリア、ポルトガル、ギ
リシャなどの南欧では0ユーロ以上 1,250ユーロ未満であるのに対し、デ
ンマーク、ドイツ、スウェーデンなどの北欧では、2,000ユーロ(約24万円)
以上 5,000ユーロ(約60万円)未満となっている。また、30万ユーロ以上
の高額受給者は、ほとんどがデンマークやイギリスに所在している。
 
直接支払の階層別の戸数および金額(単位:千戸、百万ユーロ、%)
  戸数 割合 金額 割合
0-1.250 2,398 53.76 971 4.34
1.250-2 381 8.54 607 2.71
2-5 727 16.30 2,395 10.71
5-10 409 9.17 2,916 13.04
10-20 304 6.81 4,246 18.98
20-50 184 4.13 5,541 24.78
50-100 42 0.94 2,798 12.51
100-200 11 0.24 1,433 6.41
200-300 2.1 0.05 514 2.30
300-500 1.3 0.03 478 2.14
500以上 0.6 0.01 468 2.10

合計

4,460 - 22,366 -
 資料:EU委員会
 注1:ギリシャを除くEU14ヵ国の合計
 注2:0-1.250は、0ユーロ以上、1,250 ユーロ未満を表す

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