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【シドニー 幸田 太 10月3日発】 オーストラリア・ポーク・リミテッド (APL)が8月の豚肉輸出実績を発表した。くしくも8月1日は、シンガポ ールに次ぐ豚肉の輸出先である日本において、関税の緊急措置が発動され輸 入関税額が増加し、輸出国である豪州にとって逆風となったが、前年同月比 12%増と増加傾向を維持し、いまだに順調な輸出が続いている結果となった。 2002年8月の豪州統計局(ABS)の輸出統計では、数量は前年同月比12% 増の5,512トン(船積ベース)、金額では2,420万豪ドル(約16億9,400万円: 1豪ドル=70円)となっている。このうちシンガポール向けは、数量で同0.1 %減の2,681トン、金額では1,010万豪ドル(約7億700万円)、日本向けでは、 数量は同54%増の1,561トンで、金額では1,090万豪ドル(約7億6,300万円)。 単純に単価でみるとシンガポール向け1キログラム当たり 3.76豪ドル(約 263.2円)に対し、日本向け1キログラム当たり6.98豪ドル( 約488.6円)と なり、シンガポール向け製品は枝肉、日本向けは部分肉という構図にあるこ とが単価から推察される。2ヵ国で8月の全体輸出量の約77%、輸出額の約 87%を占めており、豪州の豚肉輸出の大宗を占めている。 一方、と畜頭数は 2002年7月で前年同月比17%増の 50万5,600頭、豚肉 生産量も同15%増の3万7,028トン(温と体枝肉ベース)となった。平均枝肉 重量で見ると、ニューサウスウエールズ州とクィンズランド州では75キログ ラムを超えており、その他の州の平均60〜70キログラムを大きく上回ってい る。かねてより豪州産豚肉の不評要因のひとつであった、小ぶりな枝肉重量 の問題も大手インテグレーターが集中する2州では、輸出に向けて系統造成 による品種改良が進んでいることが分かる。 豪州の養豚産業は、生産者数2,543戸、年間豚肉生産量約40万トン(温と 体枝肉ベース)と日本の豚肉生産量の3割程度にすぎない。かつては生産構 造も自国生産、自国消費の完結型であった。 96年に外国からの豚肉輸入を自由化したことに伴い、国内産に比べ安価な 加工原料向けのカナダやデンマーク産の豚肉が一気に輸入された。豪州には この結果、国内価格が急落し生産者が大きな打撃を受け、国内産業が危機に 瀕した苦い経験がある。 政府は、国内の生産者救済のため、生産団体の統廃合による業界の基盤強 化や輸出振興に異例の補助金を投入し産業の建て直しを図った。 また、マレーシアで発生したニパウイルスによりマレーシアからの豚肉の 供給を断たれたシンガポールをターゲットとして「エアポーク」と銘打った 積極的な販売促進活動を行い、シンガポールにおける豪州産豚肉の地位を獲 得することに成功した。 さらに、日本においても、豚肉の供給国であった台湾、韓国で相次ぎ発生 した口蹄疫の影響により、それらに代わる供給地の1つとして日本向け輸出 量も増加している。 APLでは、昨年11月に豪州豚肉産業へさらなる利益をもたらす戦略計画 を発表し、輸出市場の拡大、生産コストの動向調査、家畜衛生条件や製品の 品質の向上に取り組んでいる。また、「セーフポーク」と呼ばれる新しい危 機管理マニュアルの策定など、その対応に余念がない。
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