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【シドニー駐在員 粂川 俊一 10月10日発】豪州の肉牛・牛肉産業におい ては、国内的には干ばつの影響から、肉牛価格が下落し、輸出面では、前年 水準を下回って推移しているため、生産、輸出とも必ずしも好調とは言えな い状況が続いている。こうした中、韓国向けについては、好調な牛肉輸出に 一層の弾みをつける販売促進活動や生体牛の輸出再開など、積極的な取り組 みが行われている。 まず、牛肉輸出に関しては、9月の対韓輸出量が前年同月と比較して93% も大幅に増加する中、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は日本で開催し た「オージー・ビーフ・フォーラム」に引き続き、韓国においても、豪州産 牛肉の販売促進キャンペーンを開始した。 これは、韓国において地方部も含めた初めての本格的な消費者向け宣伝キ ャンペーンで、同国の家庭における主要な購買者である主婦層をターゲット に、主婦に人気がある女性パーソナリティーをキャンペーンに起用し、新聞 や雑誌、店頭での販売促進活動を行うものである。 MLAでは、このキャンペーンを、韓国市場において豪州産牛肉の地位を 確立するための長期戦略の一環としている。韓国は昨年、牛肉輸入を自由化 し、今後の成長が見込まれる輸出市場である。豪州牛肉業界は、3年以内に 韓国向け輸出により年間8千万〜1億豪ドル(56〜70億円:1豪ドル=70円) もの追加的な収入を得る可能性があると期待している。 MLAは、輸入自由化を、特に価値の高いチルドビーフの売上げを増やす 重要な機会ととらえており、今回の販売促進活動の焦点もそこにあるとして いる。MLAによれば、韓国向けチルドビーフの輸出量は、2000年の762ト ンから 2002年の前半だけで2,100トンを超える水準まで増加している。 一方、時を同じくして、試行ではあるものの、韓国向け生体牛輸出が再開 した。同国の生産者による激しい抗議行動や韓国側からの豪州産輸入生体牛 にブルータングの感染が指摘されたことにより、昨年6月から輸出停止措置 がとられていたが、と畜体重まで韓国で肥育される予定の 400キログラムの アンガス種の去勢牛536頭が10月5日、同国に到着し無事に陸揚げされた。 これは、豪州からの生体牛輸出の本格的再開に向けた3回の試行のうち最 初のものであり、さらに2隻分の出荷が予定されている。生体家畜輸出業者 団体であるライブ・コープによれば、今回の生体牛輸出の再開は、両国の政 府と業界の間の徹底的な協議の成果によるものとしている。 その協議の結果、豪州においてブルータング清浄地域における船積み前の 検疫を実施するとともに、韓国において農場に導入される前に、15日の隔離 期間を設けるという新たな基準が導入されるなど検疫条件が強化された。た だし、ライブ・コープでは、本格的に輸出が再開されても、韓国での隔離施 設能力の制約のため、輸出可能な頭数は、年間8,500頭程度と見ている。 なお、生体家畜輸出については、韓国向けとは対照的な事態も生じている。 既報(平成14年8月6日海外駐在員情報)の中東向け生体牛輸出停止に引き 続き、相次ぐ生体羊の大量死亡事故の発生を受け、10月1日には生体羊輸出 についても、積出港などの限定により、暫定停止措置が部分的ながらも実施 された。また、先ごろ中国向け生体輸出業者が、検疫上問題のあった生体牛 を検疫当局の指示に従わず輸出しようとしたことが発端となり、中国側から 暫定的に生体牛輸入を停止された。現在、これらについては、疾病上の問題 を含め調査が行われている。
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