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配合飼料原料をめぐり、種々の問題(インドネシア)


【シンガポール駐在員 小林 誠 10月10日発】 インドネシア政府は、政府規則
PP12/2001により、2001年からすべての物品の販売価格の10%を販売者から徴収
する付加価値税制度を導入したが、家畜飼料や畜産物については、経済不振の中、
国民生活に対する影響が大きすぎるとして、農業省を含む畜産関係者が抵抗し、
飼料に対する適用が見送られていた。同規則は、今年7月に同 PP43/2002として
改正され、10月から施行されたが、今回の改正では、政策上の戦略物資を付加価
値税の対象とする見直しが行われ、飼料原料等のうち、ビタミンやミネラルなど
の飼料添加物と動物医薬品が戦略物資とみなされ、課税対象とされた。

  本税をめぐっては、課税対象品目のほか、課税方法にも問題があるとされてお
り、政府内でも議論が続いている。課税対象品目をめぐっては、農業省畜産総局
は、ビタミンやミネラルなども飼料原料であると主張しているのに対し、国税当
局の決定では、原料から除外されている。また、生きた家畜についても、繁殖素
畜は非課税だが、肥育など生産用は課税対象とされるなど、徴税の際の混乱があ
った。課税方法の問題点としては、規模の大小に関わりなく、個人経営であれば
非課税だが、政府、会社、協同組合など法人経営の農場であれば課税対象とされ
ており、農民の組織化により競争力を強化するという農業省側の政策意図とは相
反したものとなっている。

  今回の改正規則の施行を受けて、インドネシア飼料協会では、早ければ10月か
らの鶏用配合飼料の値上げが避けられないという見方を表明している。同国では、
ルピアの為替レート上昇の影響などもあって、今年に入ってから鶏用配合飼料の
価格が低下しており、ブロイラー用飼料は1月に1キログラム当たり 2,340ルピ
ア(約35円:100ルピア=約1.5円)であったものが、7月には同2,120ルピア
(約32円)と約10%の低下、採卵鶏用飼料は1月に同2,065ルピア(約31円)だっ
たものが、7月には同1,640ルピア(約25円)と約20%低下していた。

  同協会では、配合飼料が値上げされれば、鶏肉や鶏卵を中心とした畜産物の価
格上昇も避けられないとみており、特に価格変動が消費動向に直結している鶏肉
・鶏卵の消費減退が避けられないとしている。

  このような付加価値税をめぐる政府内を含めた対立がある一方、農業省作物総
局は、飼料用トウモロコシの輸入削減対策として、現行10%の飼料用トウモロコ
シの輸入関税を40%に引き上げることを提案している。インドネシアのトウモロ
コシ生産量は、年間1千万トン以上に上るが、特に大手を中心とした飼料会社は、
国産品の品質が劣ることや価格差を理由に毎年 120万トン程度のトウモロコシを
輸入し、飼料原料としている。作物総局は、輸入トウモロコシが国産トウモロコ
シの価格を不当に押し下げているとして、高い関税率の設定により国内のトウモ
ロコシ農家を保護しながら、トウモロコシの作付面積を約25%拡大してこの輸入
分を国内生産で補おうとしている。

  しかし、これが実現すれば、飼料価格の上昇は避けられないものとみられ、今
度は農業省内における総局間の対立が生じる可能性がある。インドネシアは、世
界貿易機関 (WTO)における国際交渉では、農産物市場の自由化を求めるケア
ンズ・グループの構成国の1つであり、今回の作物総局の提案は、これまでの同
国の交渉姿勢にも反したものとなっているため、提案の真意も含め今後の動向が
注目される。


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