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パラグアイで口蹄疫発生の疑い


【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 10月16日発】 パラグアイにおいて、口
蹄疫の疑いのある小水疱を呈した牛が数頭見つかった。疑似患畜が見つかっ
た場所は、パラグアイ東部のカニンデジュ県のコルプスクリスチ市に所在す
る牧場である。ブラジルの国境から20キロメートルのところにあり、ブラジ
ルのマットグロッソドスル州およびパラナ州と隣接しているため、ブラジル
政府および両州の衛生当局は、監視体制を強化した。この両州には合わせて
3,200万頭弱、ブラジル全体の20%弱の牛が飼養されている。

 ブラジルのプラチニデモラエス農相は9月23日、パラグアイで口蹄疫が疑
われる牛が見つかったとの情報を入手し、翌日24日に、パラグアイの衛生当
局が最終的に診断を下すまで、家畜および畜産関連製品について国境を一時
的に閉鎖することとし、さらに国境監視のためブラジル陸軍に応援を依頼し
たと発表した。ブラジル政府は、2005年までに口蹄疫を撲滅する「口蹄疫撲
滅計画」を実施中であり、万一国内の清浄地域に口蹄疫が侵入した場合、E
Uなどの生鮮牛肉の輸入国から輸入禁止措置がとられることを心配している。

 パラグアイは9月24日、血液検査等の結果、口蹄疫ではなく、牛伝染性鼻
気管炎(IBR)であったと発表したが、その後、ブラジルとパラグアイは
協議し、2国間の検討会をメルコスル等関係国(アルゼンチン、ボリビア、
ブラジル、チリ、パラグイア、ウルグアイ)に口蹄疫に係る衛生監視体制の
監査権限を与えられたパンアメリカン口蹄疫センター( Panaftosa)の技術
者も交えて開催した。しかしながら、調査方法について両国の意見の異なっ
たため、10月2日に最終的な結論がなく終了した。

  これと平行して、アルゼンチンとウルグアイは、Panaftosa に対し、パラ
グアイへ調査団を派遣するよう要請し、10月2日には Panaftosa から前向
きに検討する旨の回答を得た。一方パラグアイは、9月30日から血液サンプ
ルを渡す用意をしているのに、Panaftosaは10月4日に取りに来ており、結
果は10月8日に解るので、この検査結果を見るべきであるとした。

  このような情勢の中、10月9日、Panaftosa にメルコスル等関係国が集ま
り会議が開催され、その結果、血液検査により陽性を疑うサンプルがあった
が、確定に至るための情報が不足しているとされ、10月14日から1週間程度、
現地調査をPanaftosaの指揮のもとでメルコスル等関係6カ国が参加して実施
することになった。

  なお、10月4日、アルゼンチンは事態が進展しないことに対し、状況が正
確に把握できるまで、予防的措置としてパラグアイ産牛肉の輸入禁止措置お
よびパラグアイ産農産物の通行禁止措置を講じた。パラグアイ産農産物は、
アルゼンチン経由でチリに陸送されており、パラグアイにとって通行禁止措
置は重大な問題である。これに対しパラグアイは、アルゼンチンの措置が解
除されるまで、アルゼンチン産の農畜産物に対する検疫許可の停止を10月8
日から実施し対抗した(実際は11日に終了)。10月15日にはパラグアイ産の
農畜産物は、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)の監視下でアルゼ
ンチン国内の通行を許可されたが、チリはカニンデジュ県と近隣2県からの
畜産物輸入を停止した。

  2001年パラグアイ農牧省の統計によれば、牛は日本の国土の 1.1倍の面積
に約990万頭が飼養されており、そのうち肉用牛が約920万頭、乳用牛が約70
万頭となっている。なお、口蹄疫発生が疑われているカニンデジュ県には、
牛は68万頭弱、全体の 6.8%が飼養されている。

  パラグアイの牛肉輸出動向を見てみると、2001年の輸出量46,200トンのう
ちチリへ約55%の25,400トンを、ブラジルに30%弱の13,800トンを輸出して
おり、チリとブラジルの2国で約85%を占めている。また、輸出向けと畜頭
数は全体の68%を占めており、牛肉の輸出志向が強い国とも言える。

  パラグアイは、1997年に国際獣疫事務局(OIE)から、口蹄疫ワクチン接種
清浄国として認定されている国であり、また2002年からEU向け高級牛肉の
関税割当枠(ヒルトン枠)を1,000トン与えられている。

  現在、メルコスル(南米南部共同市場)において、ワクチン接種により沈
静化している口蹄疫が再び活性化すれば、EUを中心として開放されている
生鮮牛肉の市場が閉ざされる心配もあり、今後の動向が注目される。
    

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