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【シドニー駐在員 幸田 太 10月17日発】 連邦政府トラス農相は10月11日、 2003年以降の米国向け牛肉輸出枠の配分方法を発表した。 同農相はこれに先立ち、配分方法の検討のため、米国向け牛肉輸出枠審査委員 会を7月11日に設立し、委員長に南オーストラリア州農業省総務局長、委員には アコアーホテルグループ会長、西豪州地域開発公社会長と審査の客観性を確保す るため、食肉業界と直接関係ない者を指名した。同委員会では、2002年の政府管 理分(3万トン)枠の配分の権限を持つほか、2003年以降の輸出枠の配分方法に ついて10月1日までに勧告を行うこととされていた。 同委員会による2003年以降の配分に係る勧告のポイントは、以下のとおり。 @ 日本への牛肉輸出量の減少により、米国への輸出意欲は高いまま推移すると 予測されることから、今後3ヵ年、輸出枠を管理する必要がある。 A 2002年に実施されている米国6割その他4割という配分方法は、根拠に乏し く説得力がない。 B 配分方法は効率、平等、公正さのバランスがとれたものとすること。 C 配分方法は、単純かつ透明性が確保されるものであって、恣意的な裁量が働 いてはならない。 D 配分は一般的に困難ですべての業者が満足する配分案はない。 トラス農相は、これらを受けて配分方法を次のとおり発表した。 ○ 2003年以降の枠の配分は、全体の数量から政府管理分1万5千トンを控除し、 残りの数量につき、米国向けにのみ輸出を行っている業者に8割、それ以外 の業者に2割を配分する。配分数量の基礎は、それぞれの輸出業者の輸出実 績による。なお、今年度の 37万8,214トンの対米輸出枠外の数量は2003年以 降の基礎として算定されない。 ○ 配分は、前年までの輸出実績に基づき算定する。 例えば 2003年は2001年と 2002年の平均数量、2004年は2001年と2002年と2003年の平均数量に基づくも のとする。 ○ 業者ごとに配分された枠は譲渡可能である。 ○ 配分が業者の実績により作成される場合、業者は、1997年豪州食肉家畜産業 法に基づき発行される食肉の輸出ライセンス保有することが必要である。 ○ 毎年、配分総量の一定割合(5〜10%)を競売にかける。 ○ これら配分方法は2005年まで適用される。 このように、2003年の配分方法は、2002年(「海外駐在員情報」平成14年5月28 日号および7月4日号参照)の米国6割その他4割の配分比率と比べ、より米国輸 出実績を重視することとなった。また、2002年の方法において移行措置として、 業者ごとの対米輸出量が前年比 85%から140%の間に収める規制を設けたが、今 回の方法には含まれていない。さらに特別措置として政府が管理していた3万ト ンは、1万5千トンに引き下げられて留保することとなった。 10月11日現在、対米輸出枠の消化状況は、船積み数量28万8,188トンで枠の消化 率は76.2%となっている。枠の残りは、9万26トンで前年10月1日時点の船積み数 量26万9,451トンを6.9%上回っており、昨年に引き続き今年も37万8,214トンを超 過する可能性は高い。 一方、この決定は、実質的に米国輸出実績比率が少ない米国以外の日本などを 主な輸出先としているパッカーやフィードロット業者にとっては、割当数量の獲 得が期待できないため、豪州食肉委員会、豪州家畜生産者委員会および豪州フィ ードロット協会は連名で、本決定に対する反対の意向をあらわにしており、実際 に今回の決定どおり実施されるかのか注目されている。
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