ALIC/WEEKLY


今年上半期の乳製品の輸出入統計を公表(フィリピン)


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 10月17日発】  フィリピン酪農公社(NDA)
はこのほど、2002年上半期の乳製品の輸出入統計を公表した。これによると、輸入
が前年同期比1.3%減の78万1千トン(全乳換算、以下同じ)とわずかに減少したの
に対し、輸出は56.0%増の6万9千トンと大幅に増加した。拡大する東南アジアの乳
製品需要に照準を合わせ、アセアン域内における輸出拠点を目指す同国の乳業部門
が、着実に成長している様子がうかがえる。
 
 同公社は、輸出が大幅に伸びた要因として、政府が、停滞する同国経済を刺激す
ることを期待して、輸出型企業の活動を積極的に支援したことに加え、ネスレ・フ
ィリピン社やアラスカ・ミルク社をはじめとした乳業会社が目覚しい活躍を遂げた
ことを挙げている。特に、東南アジアのグループ中、最大の業績を上げるネスレ・
フィリピン社は、度重なる投資戦略により、域内における育児用粉乳やフィルド乳
製品(乳脂肪の一部をパーム油などの植物性油脂に置き換えたもの)の供給センタ
ーとしての位置を確立する体制を整えつつある。こうしたことから、フィリピンの
アセアン域内に対する輸出攻勢はますます強まるものと思われる。
 
 輸出先を国別に見ると、マレーシアが前年同期比34.3%増の3万7千トン、イン
ドネシアが同18.3%減の2万1千トン、タイが同 330%増の4千トン、ベトナムが
同21.6%増の4千トンとなっている。以上の4ヵ国で輸出量全体の95%を占め、そ
の中でも、上位2ヵ国のイスラム圏諸国は全体の8割以上を占めている。フィリピ
ンは、ハラル食品(イスラム教徒が食することが可能な食品)の製造・輸出に力を
入れることを表明していることから、イスラム教徒の比率が高いマレーシアやイン
ドネシアへの乳製品をはじめとする畜産物の輸出は、今後、一層増加すると考えら
れる。なお、同国から輸出される乳製品は、粉乳を原料として使用した製品および
フィルド乳製品が全体の99.6%を占め、残りの0.4%がチーズとなっている。
 
  一方、国内の生乳生産の基盤が極めて脆弱であることから、輸入は前年同期と高
い水準となっている。品目別では、上位3品目は輸出の主力である粉乳類の製造に
関連の深い品目で、脱脂粉乳が前年同期比 6.4%減の32万6千トン、全脂粉乳が同
6.8%減の14万4千トン、濃縮ホエイが同6.5%増の13万1千トンとなっている。次
いで多いのはバターで、同 7.9%増の2万7千トン、また、消費が伸び悩む牛乳は
同1.7%減の1万9千トンにとどまっている。

  また、輸入先を国別に見ると、豪州が前年同期比11.8%減の31万トン、ニュージ
ーランドが同31.8%増の26万1千トン、米国が同19.8%減の6万5千トン、シンガ
ポールが49.3%増の3万3千トンと続く。オセアニアとシンガポールの輸入シェア
の合計は、前年同期より5ポイント増加して77.3%となり、米国やEUへの依存度
は次第に低くなる傾向にある。今後は、東南アジアおよびオセアニアという枠組み
の中での貿易相互関係が一層深まっていくものと思われる。
 
  こうした状況の中で、NDAは、2003年に予定されるアセアン自由貿易圏(AF
TA)について、関税率の低下によって安価な原材料の輸入が増加し、NDAが進
める生乳の自給率増大政策が打撃を被ると共に、国内の生乳生産基盤がますます脆
弱化するとして懸念を示した。一方、モンテメーヤー農務長官も、同国における生
乳の自給率が1%程度に過ぎないという現状を改めて踏まえ、酪農家に対して、生
乳の生産拡大への努力を怠らないよう啓発に努めると述べた。

元のページに戻る