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アルゼンチン、チリへの牛肉輸出再開を待望


【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 10月23日発】 アルゼンチンの現地報道に
よると、チリ農牧庁は10月21日、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SEN
ASA )に対し、今後は牛肉輸入再開に向けた食肉処理加工施設の認定作業
などを行う意向であると伝えた。これは、チリの家畜衛生調査団が 8月26日
から 9月6日に実施したアルゼンチンにおける家畜衛生状況に関する調査結
果が良好であったことを受けたものである。

  アルゼンチンでは 2001年3月に口蹄疫が発生したことから、主要牛肉輸入
国が同国からの牛肉輸入を停止したが、EUが今年2月1日から 3州を除き
輸入を解禁し、その後全州からの輸入を認めている。一方、アルゼンチン牛肉
業界では、EUに次ぐ第2の輸出先であったチリ市場が口蹄疫発生以降、約
19 カ月にわたり閉鎖されているとして、同市場への輸出再開を待ち望んでい
る。
 
  一方、チリ農牧庁の 2002年3月19日付け決議 833号によると、口蹄疫清浄
国または同地域がそのステータスを喪失した場合、6ヵ月間にわたり口蹄疫が
発生しなければ、一定条件のもと、牛肉の輸入が許可されるとしている。ア
ルゼンチンでは、2002年1月22日以降、新たな口蹄疫発生は確認されていない
ことから、7月23日以降は同国産牛肉のチリへの輸入が可能であるとして、チ
リの家畜衛生調査団による現地調査の実施を要請していた。 しかし、チリで
鳥インフルエンザが発生(詳細は、海外駐在員情報第535号を参照)した影響
で、同調査団の派遣が見送られていた。
 
  SENASAによると、チリの家畜衛生調査団が実施したアルゼンチンにお
ける家畜衛生状況に関する調査結果について、チリ農牧庁からの報告は、@口
蹄疫の発生が認められないこと、Aワクチン接種率が高いこと、Bアルゼンチ
ンの防疫措置は、チリが設定している牛肉輸入の諸条件に合致したものである
こと、CSENASAが実施している口蹄疫管理計画は、組織化された民間部
門と共同で実行されていることなど、おおむね高い評価内容となっている。

  チリの牛肉需給動向を見ると、90年代における牛肉の需要増加に伴い輸入が
増加し、2001年は需要量(枝肉重量ベース)の約 6割が輸入されている。同年
の牛肉(冷蔵肉および冷凍肉)輸入量(製品重量ベース)は、8万5千トンで
あり、国別で見ると、ブラジルとパラグアイの2カ国で全輸入量の9割強を占
めている。最大の供給国であるブラジルは前年比82.4%増の5万3千トン、パ
ラグアイは20.3%増の2万6千トン、アルゼンチンは86.6%減の4千トンなど
となった。アルゼンチンは99年に全輸入量の約半分を占めていたが、口蹄疫発
生で同国産牛肉輸入が停止されたことなどから、主要な供給元がブラジル、パ
ラグアイへシフトしている。

  一方、アルゼンチン生産省は10月22日付けプレスリリースで、2001年3月の
口蹄疫発生以降、同国産牛肉輸入を停止していたロシアが同措置を解除する決
定をアルゼンチン側に通知した旨を発表した。チリおよびロシアの両市場は、
アルゼンチン産骨抜き牛肉の主要輸出市場である。また、高級部位を輸出する
EU市場と異なり、前四分体のカット肉の需要が多いことから、EU市場の補
完的存在として重要であり、アルゼンチン牛肉業界では、これらの市場への今
後の輸出増大が期待されている。
    

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