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EU委、2003年の家畜伝染病対策に関する予算を採択


【ブラッセル駐在員 山田 理 10月25日発】 EU委員会は10月18日、2003
年における伝達性海綿状脳症(TSE)やその他の家畜伝染病対策に関する予
算を採択した。この予算の総額は1億3,200万ユーロ(約161億円:1ユーロ=
122円)となっている。

―TSEモニタリング計画―
 
  EUにおいては、牛海綿状脳症(BSE)対策として、2001年1月から30ヵ
月齢超の食用に向けられるすべての牛の検査および農場で死亡した牛などの抽
出検査が開始された。同年7月からは、死亡牛の検査対象が拡大され、24カ月
齢超の農場で死亡した牛および緊急と畜したすべての牛の検査が実施されてい
る。ただし、BSEの発生が確認されていないスウェーデンにおいては、30ヵ
月齢超の健康な牛についての抽出検査が、また、30カ月齢超の牛由来の肉が廃
棄されているイギリスでは、96年8月以降に生まれた42カ月齢超の牛はすべて、
96年8月以前に生まれた牛については抽出検査が実施されている。

  2003年におけるEUのBSE検査頭数の合計は、900〜1,000万頭に上るとみ
られる。
 
  また、2002年1月から18カ月齢超の健康なめん羊・ヤギおよび農場で死亡した
めん羊・ヤギを対象とした抽出検査が導入されており、2003年のスクレイピー
検査頭数は、55万頭になるものと見込まれている。
 
  EU委員会は、加盟国から提出された2003年の検査計画について、各国の疫
学的な状況および当該家畜の飼養頭数を考慮して評価した上で、検査計画の提
出が遅れているイギリスを除く14カ国の予算配分を採択した。これによると、
BSEおよびスクレイピーのモニタリングについては、EUから最大 9,433万
ユーロ( 約115億円)が拠出され、検査キットの購入費に充てられる見込みで
ある。

  EU委員会のバーン委員(保健および消費者保護担当)は、「これらの検査
プログラムは、EUにおけるBSEおよびスクレイピーの感染の広がりを特定
するための重要な手段となっており、(BSE等に対する)安全性に関する規
則を完全にするために必要とされる非常に貴重な情報を提供している」と述べ、
BSE検査の重要性を改めて強調した。加盟国別の予算配分は以下のとおり。
TSEモニタリングの国別予算額(単位: 千ユーロ)

国名

金額

ベルギー 4,719
デンマーク 2,977
ドイツ 20,723
ギリシャ 975
スペイン 5,984
フランス 30,554
アイルランド 9,577
イタリア 6,952
ルクセンブルク 198
オランダ 6,312
オーストリア 2,455
ポルトガル 1,059
フィンランド 1,402
スウェーデン 440
イギリス -
EU計 94,327
―家畜伝染病撲滅計画―
  EU委員会は、2003年におけるBSE以外の 13の主要家畜伝染病に関する
50の撲滅およびモニタリング計画並びに人畜共通伝染病の防疫計画についても
採択した。これらの計画に対し、EUから 3,785万ユーロ(約46億円)が拠出
される(補助率50%)見込みである。

  人の疾病(マルタ熱)の原因となる、めん羊やヤギのブルセラ病撲滅のため、
1,045万ユーロ( 約12億円)が南欧5カ国に配分された。また、牛のブルセラ
病および牛の結核病の撲滅に配分された予算を併せると全体の76%に達し、人
畜共通伝染病の撲滅対策に重点が置かれていると言える。

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