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【シンガポール駐在員 小林 誠 10月24日発】 ラオスでは古来、水牛は主に田 畑の耕作などの役用として飼われており、夕暮れの中、水牛を引く農民が家路につ く姿が風物詩になっていた。以前は農民が水牛をと畜し、食用に供するのは、老齢 で役用に適さなくなった時か、冠婚葬祭などの特別の機会に限られていた。 近年、開発途上国でも農業の機械化が進展しているが、ラオスでもこの傾向が進 みつつあり、これに伴って水牛の頭数が減少している。同国の水牛頭数は、97年ま で一貫して増加してきたが、98年に前年比▲11%の減少となって以後、減少傾向が 続き、2001年末現在の頭数は 102万8千頭、前年比2%減となった。ラオス農林省 畜産局によれば、頭数の減少傾向が著しいのは、首都ビエンチャン市および周辺部 とタイ国境沿線各県であり、北部山岳各県では逆に頭数が増加している。ビエンチ ャン市畜産部によれば、同市の水牛頭数は、97年に4万2,500頭だったものが、2001 年には2万3,876頭と44%の大幅な減少となっている。 同国の農民が耕作を機械化するのは、水牛の場合、1日当たり5時間の使役で約 20アールしか耕起できないのに対し、トラクターならこの数倍は可能であるからで ある。農民は、水牛を売ってトラクターを買うが、トラクターは、アタッチメント 込みで1台当たり1億4,200万キップ(約156万円:100キップ=1.1円)程度であり、 年間1人当たりの所得が 290ドル(約3万4,800円:1ドル=120円)の同国では極 めて高価である。水牛の価格は、現在、ビエンチャン市で生体重1キログラム当た り 9,600キップ(約106円)、地方では同 7,600〜8,400キップ(約84〜92円)とな っているため、生体重450キログラムの水牛を販売した場合、342万〜432万キップ (約3万7,620〜4万7,250円)程度の収入となるが、トラクターの価格との差は非 常に大きい。農民銀行などがローンを用意しているが、貸出利率が年15%以上と高 いことから、農家が機械購入のために資金を借りることは少なく、機械購入資金は、 農民グループ単位での水牛群売却で調達されることが多い。また、水牛は、粗食に 耐えるため、稲ワラなど農業副産物や遊休地での放牧で飼うことができるが、トラ クターの場合には、当然、燃料を購入する必要があり、1リットル当たり 2,700キ ップ(約30円)の軽油代も大きな負担となってくる。 水牛頭数の減少には、機械化以外にもいくつかの原因がある。例えば、都市化の 影響による食肉需要の高まりや皮革産業、さらには角を利用した装飾産業からの需 要の高まりが挙げられる。ビエンチャン市内の水牛肉需要量は、同市によれば、1 日当たり 80〜100頭分程度であるとされている。これに加え、タイ東北部では、一 般に、水牛肉が最も好まれており、これに対する供給も正規な流通だけではまかな いきれていないため、国境を流れるメコン河を渡って対岸のタイへ不正に輸出され る水牛頭数も相当数に上るとみられている。また、タイの皮革産業は、年間100万 頭分にのぼる牛皮・水牛皮を必要としているといわれているが、国内では十分な供 給が得られていない。 水牛が役用から解放されれば、と畜年齢が下がり、肉資源としての効率が向上す るとする見方もあるが、飼養頭数の減少傾向が止まる気配はなく、水牛以外の牛の 頭数も97年以降は減少傾向にあることから、国内では将来的に食肉資源が不足する ことが心配されている。
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