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【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 10月24日発】 米農務省(USDA)は、食肉(牛・ 豚・鶏)や鶏卵、乳製品などの格付け業務に加えて、日本で言うところの銘柄牛 肉・豚肉の認定プログラムも実施している。現在、USDAの認定銘柄としては、大 きく分けて、牛肉で30ブランド、豚肉で4ブランドが存在する。これらには、品 種名のほか、パッカーやスーパーなどの特定の企業名を冠したブランド(例:ウ ォルマート・アンガス・ビーフ、サーティファイド・ヘレフォード・ビーフ)も あり、USDAという政府機関が、公正な「ものさし」の提供という意味ではあるに せよ、こうした企業の商業的な販売戦略にも一役買っているという実態は、とて も興味深い。 その中でも、種畜登録団体のアメリカン・アンガス協会による創設から25年を 迎える「サーティファイド・アンガス・ビーフ(CAB)」は、比較的脂肪交雑の多 い高品質牛肉として、国内で最も定着しているブランドであるといえる。 CABの認定は、USDAの格付員が、と畜時の生体牛の外観と枝肉の品質に関する 基準に基づいて実施する。その基準とは、まず、生体時において、毛色の51%以 上が黒色の去勢牛または未経産牛であることが確認され、また、枝肉の段階では、 @脂肪交雑が7段階評価の上から3つ目以上(「やや多い」、「適度」、「並」) で、成熟度(5段階評価)が最も上の「A」であること(格付の肉質等級では「プ ライム」と「チョイス」の一部が該当)、A脂肪交雑に「標準」以上のきめがあ ること、B歩留まり等級(上から1〜5)が1〜3の範囲内であること(過度な 脂肪が付着していない)などの条件に合致することである。 アメリカン・アンガス協会が先ごろ公表したデータによれば、2002年度(2001 年10月〜2002年9月)においては、生体時の基準を満たした個体1,200万頭(同 期間中の全米の総と畜頭数約3,567万頭の約34%、総格付頭数約2,757万頭の中の 約45%)超のうち、210万頭(それぞれ同約6%、同約8%)が最終的にCABとし て認定され、牛肉の数量としては5億4千万ポンド(約24万トン)と、3年連続 で5億ポンドを超えている。全米の生産量からするとまだわずかなシェアに過ぎ ないが、10年前に比べるとおよそ6倍の規模にまで成長している。2002年度にお ける認定数量の仕向け先別の割合は、小売向けが約54%、フードサービス(レス トランなど)向けが約31%、輸出向けが約13%であり、また、加工が施されたい わゆる付加価値製品は、1,200万ポンド(約5,400トン) と、前年度比25%増とい う大幅な伸びを示しているのが特徴である。 現在、全米には、CABブランドの表示ができる販売ライセンスを持った小売店 が3,000店以上、同レストランが約3,400店以上(これ以外にライセンスを持たな いためCABブランドの表示はできないがCABを利用しているレストランは約35,000 店)あるとされ、また、海外へは日本を含む45の国と地域に輸出されている。一 方、農家段階でも、99年からCABを生産するフィードロットのライセンス・プロ グラムがスタートし、現在、全米70ヵ所にライセンスが与えられている。 米国の小売段階においては、店内でのカット、包装が主体の高級銘柄牛肉・CAB は、近年伸びが著しい低価格商品主体のケースレディ・ミートの対極的な商品と しても、今後も重要なポジションをキープしていくものと考えられる。
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