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第一次ラウンド始まる 豪州と米国の自由貿易協定(FTA)締結に向けた第一ラウンドの交渉が、キ ャンベラで3月17日から21日の間行われた。この交渉は、昨年11月14日の両国政 府による交渉開始合意を受けて行われたもので、2004年の米国大統領選挙のキャ ンペーンが始まるまでにFTA締結を目指している。 両国のFTA交渉に関しては、交渉を開始する以前から、双方から種々の問題 点が指摘され、特に農業分野においては、品目ごとに双方の利害が対立すること や豪州側の衛生植物検疫(SPS)の問題から、交渉は難航することが予想され ていた。 交渉に先立ちベール貿易相は3月3日、豪州側の交渉上の重点項目を発表して いる。それによると農業分野については、主に、 @ 牛肉、乳製品、砂糖、ピーナツ、綿花への関税割当制度の撤廃 A 豪州が米国または他の国に農産物を輸出する際に影響を及ぼすことから、米 国の農業補助金の削減または撤廃 B 世界貿易機関(WTO)の交渉時において、市場アクセスの実質的改善やす べての農産物に関する輸出補助金の撤廃、農業に対する国内支援の実質的削 減を共同して行うことの再確認 C 米国に対し、SPSの実施方法について、不当なSPS制限の撤廃すること、 SPS協定の実行を協力して行うこと、適切な国際機関でSPSに関する国 際標準、ガイドライン等を米国と協力して作成していくこと などとなっている。 予想通り困難な交渉となった農業分野 報道によると、交渉の結果について、豪・米双方の代表団は、「FTA締結へ 確固たる基礎を築いた。」と評価したものの、FTA締結は「しばらく時間を要 するだろう」と述べている。 また、農業分野に関しては、3日間討議を行ったものの大まかな枠組みについ て話し合ったのみで、今後少なくとも7月まで交渉は行なわれないとのことであ り、予想通り困難な交渉となった。 交渉の中で両国が提起した問題点は、米国側が@豪州小麦公社(AWB)によ る小麦の独占的輸出A豪州検疫検査局(AQIS)によるSPS−についてであり、 豪州側では@米国の農業法A一般的な国内生産者補助金−についてであるとされ ている。 交渉の進展に期待する豪州牛肉生産者団体 一方、豪州肉牛協議会(CCA)などは、FTA交渉の進展を求める声明を発 表した。主な内容は以下の通り。 ・豪州牛肉に対する貿易障壁の撤廃は米国とのFTA交渉の核心であり、これな しには、米国とのFTAはありえない。 ・豪州牛肉生産者のFTA交渉に対する要求は、@関税と割当制度の撤廃(輸出 割当枠37万8,214トン、関税1キログラム当たり4.4米セント(5.28円;1米ド ル=120円)、割当枠外の輸出には26.4%の関税適用)Aセーフガードを発動 しないことB豪州側の検疫の維持(ただし、検疫のスピードと透明性の確保に は改善の余地あり)など。 ・関税割当枠を撤廃した場合、豪州側が主に輸出しているのは加工用の赤身肉で あり、米国の穀物飼育牛とは競合しない。 ・両国のFTA交渉が成功すれば、牛肉などの農産物に対する貿易障壁の削減に 反対の日本や韓国のような国は孤立感を高める。両国のFTA交渉の成功は、 実質的な農業貿易の自由化と同価値であり、牛肉の貿易障壁の撤廃を達成する ために、現在のWTOドーハ・ラウンドの下での交渉に積極的に圧力をかける ことになる。 次回のラウンドは5月にワシントンで行われる予定である。交渉の行方が注目 される。 【シドニー駐在員 井上 敦司 3月27日発】
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