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GMカノーラの安全性について政府が認定の方向(豪州)


食用、家畜飼料用としては初めてのGM品種

  遺伝子組み換え(GM)作物の認定を行う政府機関である遺伝子技術規制局(
OGTR)は4月1日、ベイヤー・クロップサイエンス社から認定申請があった
商業用のGMカノーラについて、人体や環境に対する安全性を認定する方針を示
した。

  OGTRでは、申請のあったGMカノーラについては、「毒性やアレルギー、
他の穀物への影響などについて、厳密な試験を実施した結果、非GMカノーラに
比べ、人体や環境に影響を及ぼすような危険があるとは認められなかった」と述
べている。

  これにより、OGTRでは、このGMカノーラについての同局のリスク評価や
リスク管理計画を一般に公開し、これらに関してパブリックコメントを募集(期
限は5月26日)した上で最終決定することとしている。

  GMカノーラが正式に認定されれば、豪州では商業用では綿花、カーネーショ
ンについで3番目の認定済GM品種となるが、食用(油を利用)や家畜飼料用と
しては初めてのGM品種となる。

 このGMカノーラの商標名は、「In Vigor」とされ、雑草の駆除に使う除草剤
に対する耐性を備えている。豪州では、カノーラ(菜種)は、小麦、大麦に続い
て3番目の収量がある重要な冬作穀物である。


EU市場は失うものの、アジア市場に期待

  一方、GMカノーラの輸出への影響について、アジア市場へは輸出可能なもの
の、EU市場への輸出は不可能となる恐れがあるとの見方がある。
 
 豪州穀物輸出協会(GEA)は、豪州で認定される見込みのGMカノーラは、
すでにカナダで栽培されているものと同一品種であり、EUは、GMカノーラの
生産を始めたカナダからの輸入を停止したことから、豪州に対しても同様な措置
をとると予想している。しかし、主要な輸出先である日本や中国については、同
じGM品種がカナダから日本や中国向けに輸出されていることから、豪州のGM
カノーラもまた同様の条件でこれらの市場に輸出できるとみている。

 西オーストラリア州にある豪州最大のカノーラの輸出業者も、同様にOGTR
の発表を歓迎し、日本や中国市場への輸出に期待を寄せている。


商業用栽培の是非をめぐる議論は継続

  ただし、今回、最終的にOGTRにより、人体への安全性や環境への影響につ
いて問題がないと認定されたとしても、実際に栽培できるか否かは各州政府の判
断によることとなる。

 現在、豪州国内ではGM作物について、各地でその是非をめぐり議論が繰り広
げられており、今回認定申請したべイヤー社はビクトリア(VIC)州とニュー
サウスウェールズ(NSW)州に5千ヘクタールのGMカノーラ栽培を計画して
いるが、再選したNSW州のカー首相は選挙公約として、商業用GM作物(カノ
ーラを含む)については、栽培を3年間延期し、その期間に州政府の判断を決定
することとしている。一方、VIC州では、OGTRにより認定されれば、栽培
を延期することは適当でないと考えている。このように、各州で対応が異なって
いるが、穀物業界関係者は、VIC州の栽培実績が生産者の利益面や市場の受け
止め方に対する不安を取り除くだろうと述べている。
 
 トラス農相はOGTRの決定を歓迎し、GMカノーラの栽培を推進する意見を
述べている。労働党の議員から問題を提起されているGM作物と非GM作物の分
別生産流通管理(分別)については、「業界の代表者で構成される遺伝子技術穀
物委員会(GTGC)がGM穀物分別のための指針作成の準備に入っている。豪
州の穀物産業は同じ倉庫や輸送施設の中で異なった穀物を分別することにおいて
は、すでに世界の指導的役割を演じている」と述べ、問題にはならないと説明し
ている。



【シドニー駐在員 井上 敦司 4月9日発】 
 
 
 

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