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アルゼンチン豚肉需給の現状と今後の課題


2002年の豚飼養頭数は、88年比で37.2%減

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は先ごろ、同国における豚肉の生産、
需給の現状と今後の課題について報告書をまとめた。同報告書の概要は、次の通
りである。

  アルゼンチンの養豚は、トウモロコシなどの穀物生産の副次的な産業として始
まった。91年には、同国の通貨であるペソとドルを1対1で固定する通貨制度が
導入されたことから、それ以降、国内経済が安定し、多くの養豚業者の間で、飼
料効率の向上、品種改良の技術などへの取り組みが見られるようになった。

  この通貨制度の導入はインフレの収束に貢献したが、その一方で、ペソ高を招
いたことから、輸入が急増し、92年の豚肉輸入量(製品重量ベース。以下同じ)
は、前年比約4倍の3万トンに達した。主要な供給元はブラジルで、96年〜2001
年にかけて、主に加工向けとなる生鮮肉の輸入量の約6〜8割が同国産で占めら
れた。ブラジルは99年1月の変動相場制への移行による実質的な通貨切り下げに
より、さらに価格競争力を高めた。近年において、安価なブラジル産豚肉が流入
したことで、アルゼンチン養豚産業の競争力は次第に低下した。この影響は、豚
飼養頭数の減少傾向にも現れており、2002年の飼養頭数は、88年比で37.2%減の
約210万頭となった。中でも、中小規模の養豚農家における減少が顕著であった。

 
2002年の豚肉生産量は前年比19.4%減

 2002年の動向について、豚肉生産量(枝肉重量ベース。以下同じ)は、前年比
19.4%減の17万トンとなった。この要因としては、同年始めのアルゼンチンの変
動相場制への移行による実質的な通貨切り下げにより、ペソ建てのトウモロコシ
価格が上昇したことなどから、養豚農家でコスト高となり、収益性が悪化したこ
とが大きいとみられる。また、輸入量も、通貨切り下げでペソ建ての豚肉価格が
上昇したことから、72.3%減の1万7千トンとなった。

  2003年の輸入量は、前年比約2.6倍の4万4千トンと見込まれる。この主因と
しては、ブラジル南部でのオーエスキー病発生を理由に、同国の最大の輸出相手
先であるロシアが同地域産の豚肉輸入を停止したことなどから、ブラジルで供給
過剰となり、同国産の輸入豚肉価格が下落したことが挙げられる。また、2003年
の豚肉生産量は、輸入量の増加などにより、11.8%減の15万トンと見込まれる。


SAGPyA、今後の課題を公表

  こうした現状を踏まえ、報告書でSAGPyAが公表した養豚産業の課題は、次の通
りである。
 
 ・国際的に豚コレラ清浄国として認められることで、購買力のある豚肉消費国へ
   の輸出を可能とすること
 
 ・加工品(ハム、腸詰など)の消費が全体の約8〜9割を占めるといわれる中で
   、生鮮肉の消費を増加させるため、豚肉の特性、品質、および調理法に関する
   消費者への啓発普及を図ること
 
 ・需要が多い加工品に利用される部位だけではなく、すべての部位の価値を高め
   る販売チャネルを構築すること
 
 ・養豚産業は、養鶏産業のようにインテグレーションが普及していないことから
   、パッカーやスーパーなどと生産者が手を組み、インテグレーション化を図る
   こと
 
 ・脱税対策と衛生管理を強化することで、養豚産業の国内外での競争力を高める
   こと
  アルゼンチンの豚肉主要統計
 

【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 7月30日発】 


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