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EU農相理事会、GMOに関する新規則に合意


表示等に関する規則案に合意
  EU農相理事会は7月22日、EU委員会が提案した新たな2つの遺伝子組み
換え(GM)作物に関する規則案に合意した。この規則は、GM作物のトレー
サビリティーおよびその表示と、GM作物由来の食品および飼料の市場での表
示を規制するものである。

  EUでは、98年10月以降GM作物について安全性に疑問があるとして、新規
認可を凍結している。EU委員会は2001年7月25日、承認再開に向けEU規則
を強化するべく、約1年の調整期間を経て、規則案を採択、提案した。
その後、加盟国からの反対意見が生じ、最終採択には至らなかったが、本年7
月2日、ようやく欧州議会で採択された。わずかな修正があるものの、今回の
合意は、議会で採択されたものと基本的に同じである。今後、官報に掲載20日
後適用される。なお、6カ月間の移行期間がある。

最終規則の概要は以下の通り。


トレーサビリティー

 「GM作物を含む、またはGM作物から製造される」食品および飼料につい
て、生産から流通に至るすべての段階において各段階における生産者名、収穫
日など特定情報の記録・伝達をし、その記録を保管しなければならない。これ
により、人体や環境への予期せぬ危険性があると判断された場合に、GM製品
の回収が容易に行えることとなる。この記録は、5年間保管しなければならな
い。


表示

「GM作物を含む、またはGM作物から製造される」食品および飼料について 
、その旨の表示を義務付ける。最終製品にGMによるDNA(デオキシリボ核 
酸)やたんぱく質が含まれているかどうかではなく、すべてのGM食品および 
飼料について対象となる。これまでのGM食品表示の規定では、GMダイズや 
GMトウモロコシから精製された油は原料および製品として表示の義務はなか 
った。また、それらを使用して作られたビスケットについても、原材料や製品 
名に使用した旨の表示の義務はなかったが、今回の規定では、これらについて 
も表示の義務が課されることとなる。表示が課される通常の食品でのGM原料 
の許容含有率は、0.9%である。 

  また、現在表示の義務がなかったGM飼料についてもGM食品と同様に表示 
の義務が課されることになる。例えば、GMダイズ粉末と他の成分から構成さ 
れる飼料や、GMトウモロコシから作られたトウモロコシでんぷん飼料につい 
ても同様に表示が課されることとなる。なお、GM飼料を給与した家畜から生 
産される食肉、乳、卵などは、原材料としてGM飼料そのものが含まれないた 
め表示の対象にはならない。 


未承認GM物質の偶発的混入

  現在の規定では、GM食品、飼料中の未承認GM物質の偶発的な混入の許容 
含有率は定められていない。今回は、その未承認GM物質について、EUの科 
学的な評価により偶発的で技術的に避けられないものと判断された場合、それ 
の許容含有率は0.5%であるとした。なお、この規定については、3年間の期
限付きとなっている。 


共存(Co-existence)

  今回の規則により、GM作物と非GM作物が共存して生産されることが保証 
される。ただし、これによりGM作物を含む、またはGM作物から製造される 
食品および飼料と、一般、有機の食品および飼料と区別することができる。こ 
の他の製品への偶然の混入を防ぐ対策については、EU委員会が決めるのでは 
なく、各加盟国政府に委ねている。

【ブラッセル駐在員 山ア 良人 7月30日発】

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