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MLA総会、堅調な需要の維持などが今後の課題(豪州)


MLA2003/04年度販売促進予算額を大幅減

  豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は11月19日、パースで年次総会を開き役員の選出や
2003/04年度の予算などを審議した。予算額は総額で1億2,700万豪ドル(約100億3,300万円
;1豪ドル=79円)と前年度に比べ8.7%の増加となった。
  
  今年度の予算の特徴は、生産の効率性向上や基礎研究の研究開発費が前年度に比べ2倍以上
増え、約2,000万豪ドル(約15億8,000万円)となった反面、前年度の総予算額の約40%を占
めていた販売促進費が、約4,230万豪ドル(約33億4,000万円)と前年度に比べ12%減少し、
総予算額の約33%までその割合を下げたことである。

  研究開発費の約半分は、政府からの補助金で賄われるが、販売促進費は肉牛取引等の課徴
金収入で賄われる。MLAでは販売促進費が減少した理由を、今年度は干ばつの影響で家畜
の飼養頭数が減少したことから、肉牛等の取引頭数が少なくなるとみており、それにより課
徴金収入の減少が見込まれるためとしている。日本での販売促進費予算は、昨年度行った「
日本市場回復キャンペーン」経費の削減もあり、昨年の1,270万豪ドル(約10億円)から、
800万豪ドル(約6億3,000万円)に減少した。MLAは予算減額により、「国内外での効果
的な販売促進活動を行う上で影響がでる」とみている。



品質改善、販売促進活動などが需要の増加に効果
 
 この総会と併せて行われた講演の中で、MLAは豪州食肉家畜産業の現状および今後の課
題などについて述べた。それによると、MLAは、豪州の食肉家畜産業は中期的にみて拡大
傾向にあるとの見通しを示し、その要因として、干ばつの影響による素畜の高価格にもかか
わらず、堅調な国内外の需要を挙げている。さらに、世界的に供給量がタイトな状況は、今
後数年間、好調な食肉や家畜の価格を下支えすると見込んでいる。

  近年低下傾向で推移してきた1人当たりの年間牛肉消費量は、02年では38.2kg(01/02年
度は33.7kg)に回復した。この要因は、牛肉格付け制度(ミート・スタンダード・オースト
ラリア)の実施による肉質の改善、各種の販売促進活動や高タンパクな食肉の摂取が健康に
効果的であるとの広報活動によるものとしている。

  また、今後の主な懸念材料は、@干ばつの継続、A重大な家畜疾病の発生 B主要な海外
市場での需要減 C豪州ドル高の継続 D安価な食肉を供給する南米の競争力 −とみている。

 さらに、今後、食肉家畜産業の発展のために重要な課題として、@堅調な需要の維持 A
市場アクセスの改善 B食品の信頼性の保持 C生産性の向上 −を挙げている。

 これらの課題に対しては、@現在の高い小売価格、南米の安価な牛肉や食肉の代替食品を
意識した一層の需要の維持拡大を図ること A世界一の食肉輸出国である豪州にとって自由
貿易が豪州の繁栄の基礎であるとの認識の下、政府が進めるWTO農業交渉や米国とのFT
A交渉などの2国間の経済関係協定を継続的に支援していくこと B現在、豪州が他国に対
して優位にあると評価されている食品の安全性や信頼性について、その評価を維持するため
に、新たな農場段階での品質保証制度(LPA)の実施や家畜個体識別制度(NLIS)を
一層普及させること C南米の安価な牛肉や他の代替食品と競うには、農場から流通段階を
通して生産性の向上を図ること −が必要と述べている。





【シドニー駐在員 井上 敦司 11月27日発】   

 
 

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