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ブリュッセル駐在員事務所【 関 将弘、山﨑 良人 】 １．ＥＵ農相理事会、ＣＡＰ改革に合意 ＥＵ農相理事会は６月26日、共通農業政策（ＣＡＰ）改革に合意した。また、９ 月29日には、ＣＡＰ規則が農相理事会で承認された。今回の改革は、「アジェンダ 2000」において、2002年にＣＡＰの中間見直しを行うことが合意されていたもので あり、ＥＵ委員会が2002年７月に中間見直しの報告書を公表し、その後、2003年１ 月には７つの規則案を公表していた。2002年７月の報告書の公表以降議論を重ね、 2003年６月には３度の農相理事会を開催し、ようやく合意に達したものである。そ の内容は、生産と切り離した（デカップリング）単一の直接支払いの創設、直接支 払いの交付条件（クロスコンプライアンス）の強化や直接支払いの段階的引き下げ （モデュレーション）の義務付けなど世界貿易機関（ＷＴＯ）交渉に向けたものと なっている。 ２．ＥＵ委、猛暑による農家の被害に援助対策 ＥＵ委員会は、本年夏の猛暑による被害を受けた農家に対する援助対策を実施し た。主な援助対策は、①被害の大きい地域での休耕地（セットアサイド）への飼料 向け作物の作付け許可および休耕率の削減 ②家畜用飼料としての米、ライ麦、大 麦、ソルガムの介入在庫からの放出 ③牛肉分野での生産奨励金の前払い金上限の 引き上げ ④穀物、牛肉および羊・ヤギに対する助成金支払いの前倒し－が行われ た。なお、欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会（COPA/COGECA)によるこ の夏の猛暑による被害額は、130億ユーロ（約１兆7,160億円：１ユーロ＝132円） と推計されている。 ３．オランダ、ベルギー、ドイツで高病原性鳥インフルエンザが発生 ３月２日にオランダにおいて高病原性鳥インフルエンザ（ＨＰＡＩ：家きんペス ト）が確認された。その後ベルギーおよびドイツでも確認された。いずれの国でも 、病気の拡大防止および撲滅のため生きた家きん、種卵および家きんのふん等のＥ Ｕ加盟国および第三国への輸出禁止などの対策を行った。各国の関係者の努力によ り、７月にはすべての地域で制限措置が解除されている。 ４．ＴＳＥ規則の移行期間を延長 ＥＵ委員会は３月５日、伝達性海綿状脳症（ＴＳＥ）の防疫、管理、撲滅に関す る規則の移行期間について、２年延長（2005年７月１日まで）する提案を行った。 国際獣疫事務局（ＯＩＥ）との牛海綿状脳症（ＢＳＥ）に関するリスク分類に当た っての判定基準の調整やＥＵが進めているリスク分類判定作業が遅れていることか ら、ＴＳＥ規則の完全実施が困難であると判断したためである。この規則は、６月 16日の農相理事会で承認された。 ５．ＥＵ農相理事会、ＧＭＯに関する新規則に合意 ＥＵ農相理事会は７月22日、ＥＵ委員会が提案した２つの遺伝子組み換え(ＧＭ） 作物に関する規則案に合意した。ＥＵでは、98年10月以降ＧＭ作物について安全性 に疑問があるとして、新規認可を凍結している。ＥＵ委員会は承認再開に向けＥＵ 規則を強化する提案を2001年７月25日に行った。その後、反対意見などにより、採 択されずにいたが、本年７月２日に欧州議会で採択された。新たに制定された規則 は、ＧＭ作物のトレーサビリティおよびその表示と、ＧＭ作物由来の食品および飼 料の市場での表示を規制するものとなっている。この規則は、11月７日から適用さ れている。 ６．ＥＵ、ホルモン牛肉問題解決に向け新指令を発行 ＥＵ議会およびＥＵ農相理事会は９月22日、農場での成長ホルモン使用に関する ＥＣ指令を改正する新たなＥＣ指令を採択した。ＥＵが成長促進ホルモンを投与し た肉牛から生産された牛肉について輸入禁止していることは、科学的に根拠がない として96年１月に米国、カナダが世界貿易機関（ＷＴＯ）に提訴し、長年ＥＵと米 国、カナダの間で議論が行われている。この問題解決に向け、ＥＵは10月27日、Ｗ ＴＯの紛争解決機関（ＤＳＢ）に対し、ホルモン牛肉問題解決に向け新規則施行の 旨を通知し、米国、カナダが実施している制裁措置に対する解除を求めたが、米国 側から拒否されている。 ７．イギリス食品基準庁、ＯＴＭ処分対策の見直しを勧告 イギリス食品基準庁（ＦＳＡ）は７月10日、政府に対して同国で実施されている 30カ月齢以上（Over Thirty Month：ＯＴＭ）の牛の処分対策を牛海綿状脳症（Ｂ ＳＥ）検査に切り替えても良いとする勧告を行った。イギリスでは現在、ＯＴＭ処 分対策に基づき、30カ月齢以上の牛はと畜後焼却処分されており、市場に流出する ことはない。今回の勧告が実行されれば、ＢＳＥ検査で陰性と判断された牛は、30 カ月齢以上であっても市場に出回ることとなる。 ８．新規加盟中東欧10カ国、加盟に向けたさらなる努力が必要 中東欧10カ国の加盟予定国においては、加盟について国民に是非を問う国民投票 の実施など、2004年５月１日の加盟に向けた準備が行われている。ＥＵ委員会は、 新規加盟国の加盟に向けての法体系準備状況を監視するレポートを11月に発表した。 その中の農業分野では、共通農業政策（ＣＡＰ）の適用は、ほとんどの国でおおむ ね完成しているものの、さらなる努力が必要であると評価を受けたものもあり、引 き続き監視して行く必要があると発表している。 ９．人畜共通伝染病監視強化規則を採択 ＥＵ農相理事会は９月29日、食物を介して人間に感染する人畜共通伝染病の発生 を防ぐための２つの規則案を採択した。この規則案は、①加盟各国が、人畜共通伝 染病の病原体のモニタリング、食物を介して発生する伝染病の調査 ②人畜共通伝 染病とその病原体に関する情報の交換－などを行う指令案と、①動物界での人畜共 通伝染病の流行を削減させるための目標の設定 ②加盟各国の食品・飼料事業管理 者それぞれが実行する管理プログラムの作成 ③人畜共通伝染病に関連する動物ま たは食品の第３国との輸出入の安全性の確保のための方策－などを規定する規則案 である。 10．ＥＵはＷＴＯ交渉において地理的保護産品を国際的に主張 第５回世界貿易機関（ＷＴＯ）閣僚会議が９月にメキシコのカンクンで開催さ れたが、海外直接投資保護のルール作りなどをめぐり先進国と発展途上国が対立 し、交渉は決裂した。ＥＵは、ＷＴＯ交渉での合意に向け、最善を尽くしてきて おり、とりわけ途上国の要求を満たすために努力をしてきたとＥＵ関係者は主張 している。こうした中ＥＵは、ＥＵの地理的保護産品のうち、国際的に地理的表 示の保護が必要な農産物等をリストアップした。これはカンクンでのＷＴＯ閣僚 会議において、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定（ＴＲＩＰｓ協定）の 分野と農業分野において協議することを目的としたものである。
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