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EU委員会、CAP改革規則案を公表
EU委員会、見直し規則案を公表
EU委員会は1月22日、EUの共通農業政策(CAP)の改革に関する7つの
規則案を公表した。これらは、昨年7月に公表されたCAPの中間見直し(MT
R)に関する報告書(「畜産の情報海外編」2002年11月号特別レポート参照)を
規則条文としたものである。その中で、 新たに示された基準等は以下の通りで
ある。
@ 新たな直接支払い制度
単一の直接支払い額の算定基礎となる過去の支払い実績の計算対象期間を2000
〜02年とする。
A モジュレーション(直接支払いの段階的引き下げ)
年間の直接支払額により3つに区分して、削減率を設定する。年間5,000ユー
ロ(64万円:1ユーロ=約128円)以下の農家に対しては削減を行わないことは
MTRに示された通りであるが、これを超える農家については、以下の削減率
とする。
削減率(%)
|
06 |
07 |
08 |
09 |
10 |
11 |
12 |
1〜5,000ユーロ |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5,001〜50,000ユーロ |
1 |
3 |
7.5 |
9 |
10.5 |
12 |
12.5 |
50,001ユーロ以上 |
1 |
4 |
12 |
14 |
16 |
18 |
19 |
B 農村地域開発
農村地域開発対策については、MTRでは高品質な食品生産のためのEUま
たは各加盟国における計画に参加した農家に対する助成を最大5年間実施する
ことを提案しているが、その助成単価を1農家当たり毎年1,500ユーロ(19万
2千円)とする。また、農家集団が計画に基づいて消費者に対して情報提供や
販売促進活動を行う活動費の助成率は最大70%とする。
生乳生産クオータは2014年まで存続
酪農政策については、MTRでは、クオータ制度の将来の取り扱いに関する
4つの政策オプションの概要が示されていたが、今回の案では、そのうちの「
アジェンダ2000による手法の繰り返し」に近い案が示されている。
@ クオータ制度
廃止というオプションも示されていたクオータ制度については、2014年まで
継続するとされた。アジェンダ2000による政策では2005年から行うとしている
枠の拡大を1年前倒して2004年から3年間、毎年0.5%拡大し、さらに2007、08
年にはそれぞれ1%枠を拡大する(繰り返し)。
A 介入価格等
アジェンダ2000による政策では2005年から毎年5%、3年間同率で削減する
こととなっている乳製品の介入価格は、バターについては、年間7%、脱脂粉
乳については年間3.5%それぞれ2004年から5年間実施する。
バターについては、さらに介入買い入れ限度数量(年間3万トン)を新たに
設定する。
各年の介入価格 (単位;ユーロ
/ 100 kg)
|
バター |
脱脂粉乳 |
2000年〜2003年 |
328.20 |
205.52 |
2004年 |
305.23 |
198.32 |
2005年 |
282.44 |
191.19 |
2006年 |
259.52 |
184.01 |
2007年 |
236.73 |
176.88 |
2008年〜 |
213.95 |
169.74 |
注;期間はいずれも7月1日から6月30日
EU委員会は、今回の提案は、緩やかなクオータ制度の維持・拡大、介入価
格の削減および直接支払いを実施することにより、急激なEU酪農構造の変化
を防ぐとともに、EU酪農製品の輸出競争力を高めるためであるとしている。
昨年の夏以降これまでの議論において、MTRにおけるどのオプションを選択
するかについて意見の一致を見なかったため、いずれのオプションとも異なる
ものとなった。
なお、牛肉関係については、耕種作物などと同様に、単一化した直接支払い
への統合などMTRとほとんど変更はない。
◎EUのWTO農業交渉に関する提案、外相理事会で承認
EU委員会が2002年12月16日に提案していたWTO農業交渉モダリティ案が、
1月27日のEU外相理事会にて満場一致で承認された。内容は、輸入関税の36
%削減、輸出補助金の45%削減等についてはEU委員会提案のままである。
【ブラッセル駐在員 関 将弘 1月29日発】
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