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NAFTAの実施を巡って米・墨の対立が顕在化


米国産家きん肉に対する暫定的セーフガードの発動
  北米自由貿易協定(NAFTA)に基づく家きん肉の関税措置の取り扱いに
ついては、本年1月からメキシコにおける米国産家きん肉に対する関税措置(
関税割当制度)が撤廃されることとなっていたが、両国の業界団体の思惑が、
もも肉に限って関税措置を存続する方向で一致し、両国政府間でやりとりが行
われていたところであった(既報「海外駐在員情報(通巻第562号)」参照)。こ
れはメキシコの家きん肉生産者の要請を受けて昨年11月に開始されたNAF
TAの下でのセーフガードに関する調査を受けた動きであり、今回メキシコ政
府は、1月22日、今後6カ月間の暫定的なセーフガード措置を講ずると発表した。
  その概要は次の通り。

・今回の暫定的なセーフガードの発動対象品目は米国産家きん肉のうち、もも
 肉のみとする(その他の米国産家きん肉に対する関税は撤廃される)。

・5万トンの無税枠を6カ月間の暫定措置として設けるが、この間に5万トンを
 超えて行われた輸入に対しては、98.8%の関税を賦課する。

・今回合意された無税枠の5万トンは、2001年のメキシコへのもも肉輸出量と
 ほぼ同じ水準であり、また、暫定的なセーフガード措置の下で賦課される関
 税率は2001年の適用税率(98.8%)と同率とする(2002年の適用税率は49.9
 %であった)。

  これを受け、ゼーリック米通商代表は、「米国の家きん肉業界とも相談しな
がら、メキシコ政府に働きかけた結果、これまでの数年間と同じような輸出量
が確保されることとなった。」と述べ、ベネマン米農務長官も同様のコメント
を出した。ただし、今回の措置は6カ月間の暫定措置であり、その後セーフガー
ド措置が発動されるかどうかは今後の調査結果による。
  ベネマン米農務長官は、「今後も長期的な米国産家きん肉の市場アクセスが
確保されるよう働きかける」と述べた。



米国産豚肉に対するアンチダンピング調査の開始

  NAFTAに基づき、メキシコにおける米国産豚肉に対する関税措置(関税
割当制度)も本年1月以降撤廃されたが、これにタイミングを合わせるかのよ
うに生産者団体のメキシコ養豚協議会(CMP)は、メキシコ政府に、米国産
豚肉がメキシコに不当な安値で輸出されていた恐れがあるとしてダンピング防
止税賦課のための調査の要請を行った。2002 年4〜9月の6カ月間における米
国からの豚肉輸入価格が対前年同期間に比べ28.5%下落したことにより輸入量
が増加(26.2%)し、同種の産品である国内豚肉価格の低下などにより国内産
業に損害が生じたとしている。これを受けて、メキシコ政府は1月7日、事実
確認のための調査を開始すると公式発表した。同国政府は、2月19日までパブ
リックコメントを受付けるとともに、発表の翌日から 130日以内に暫定的な調
査結果を発表するとしている。



米国側からは強い不快感 

  この発表に対し米国の関係者からは、強い不満の声が上がっている。全国豚
肉生産者協議会(NPPC)のローパー会長は調査開始の発表翌日、「米国産
豚肉はメキシコ向けにダンピング輸出などされていない。NAFTAの実施を
妨げ、再交渉を目論む露骨なやり方である」として強い不快感を表わすととも
に、「メキシコ政府は、この発表の一方で日本とのFTA交渉において日本に
対し豚肉関税の撤廃を主張している」と皮肉を述べた。また、ベネマン米農務
長官も農業アナリストとの会談の中で、「メキシコの養豚団体は、WTOのル
ールに基づく、輸入豚肉のダンピングを申し立てる立場にはなく、(本来申し
立てを行うべき)メキシコの豚肉加工業界は調査の開始を支持していない。こ
れは根拠のない不当なものであり、USTRとともにメキシコ政府に対しこの
申し立てを却下するよう求めて行く」と述べている。

  NAFTAに基づく農産物の関税措置の撤廃を巡っては、メキシコの生産者
団体が大規模な抗議行動の実施を呼びかけるなどメキシコ国内では大きな政治
問題にもなっているところであり、今後も両国における動きが注目されるとこ
ろである。
  
【ワシントン駐在員 道免 昭仁 1月29日発】

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