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USDA、食肉等の安全性確保への取り組みを公表


食料の安全性確保は国民の最大関心事
 
  米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)は2月10日、一昨年の同
時多発テロ発生を契機として、国内の食肉、家きん肉および鶏卵生産における
安全性確保の重要性、FSISが果たす役割、安全性確保への取り組みなどを
まとめた小冊子を発行した。マッキーFSIS長官は発行にあたり、「同時多
発テロ発生後、食料の安全性確保は国民の最大の関心事となっており、これは
FSISの最重要課題である」と述べた。


食肉等の安全性確保への取組み状況

  ブックレットでは、FSISは既に食糧供給を通じたテロ行為の可能がある
ことを認識していたとしている。例えば、84年にオレゴン州で発生した新興宗
教(カルト)メンバーによるサルモネラ菌混入事件がそれであり、これにより
751人の食中毒患者が発生している。また、年間食品購入額の3分の1に相当
する1,200億ドル(14兆5,200億円、1ドル=121円)の食肉、家きん肉および
鶏卵製品を管轄するFSISとしてはこれまでも食肉等の安全性確保を最重要
課題としてきたが、今回の同時多発テロ発生を機にバイオテロ攻撃対策を強化
するとともに食品の安全性の向上に努めてきたとし、主な取り組みを次のとお
り整理している。

1 食品安全・危機管理室(OFSEP)の創設
  FSIS長官直属の長官補佐を長とする組織を創設した。この組織は、緊急 
  事に連邦と州との広範な連携が迅速かつ効果的に行えるようサポートし、ま
  た、被害などを最小限に食い止るための方策を科学的な見地から支援する。

  
2 FSIS版食糧安全保障プランの作成
 (2003年〜2007年)
  食品をテロ行為用の武器として使用することを包括的に防止する計画を今後
  5ヵ年で策定・実施する。OFSEPは、4半期ごとにその成果を報告し、
  毎年計画を更新する。

  
3 食肉などを生産する工場における食品安全性確保のためのガイドラインの策
   定  
  FSISが所管する食肉工場などに対するガイドラインを策定した(詳細は
  既報「海外駐在員情報(通巻531号)参照」)。


4 FSISの検査能力などの向上
  すべてのFSISの検査機関についてISOの認証を取得し、検査能力およ
  び警備を強化する。

  
5 FSIS職員の研修の実施
  すべてのFSIS職員に対して2年間の総合的な研修を実施し、食肉等の安
  全性確保などのための職員の役割や責任に関する研修を実施する。


6 輸入食肉などの検査強化
  新たな検査官ポストとして輸入サーベイランス連絡検査官(Import surveil
  lance liaison inspector)を設置し、本年3月には20名の検査官を港湾都
  市に配置する。この検査官は、施設全体のサーベイランスを管理し、検査体
  制の改善を図るとともに、輸入食肉などの安全性確保に関し必要に応じ税関
  や動植物検疫所などとの連携を図ることができる。
 
 
7 食糧安全保障ネットワークの構築
  複数の州にまたがって食糧安全保障に関する事件が発生した場合に適切に対
  応するため、連邦と州とのネットワークを発展・改善する。

  
8 食品供給におけるテロ攻撃に対する弱点の評価
 既存の国産品に対する評価に加え、輸入品に対する評価を実施する。

 
  なお、1月29日に米国食品医薬品局(FDA)より公表されたバイオテロ法
に基づく食品輸入関連二規則案は、肉、家きん肉、卵製品等のUSDA所管物
資には適用されないため、今回の小冊子の発行はバイオテロ法をめぐる一連の
動きを補完するものとも言える。

 
  
【ワシントン駐在員 道免 昭仁 2月12日発】

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