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EUの農業収入は3年ぶりに減少
EU統計局(EUROSTAT)は、先般、2002年の農業収入見込み(暫定値) を公表 した。これによると、同年におけるEU15カ国全体の農業者1人当たりの農業収 入(実質。以下同じ)は、前年に比べ 3.0%減少したと推定されている。農業収 入は、2000年以降、5%前後の高い伸びを示していたが、一転して3年ぶりの減 少となった。 各国別の動向は下表のとおりで、5カ国で増加し、10カ国で減少した。豚価格 の下落などにより生産額(実質。以下同じ)が大幅に落ち込んだデンマークやド イツの減少幅が大きかった。
国名 | 増減(前年比%) |
フィンランド | +7.3 |
ギリシャ | +5.7 |
イギリス | +3.9 |
スペイン | +1.2 |
ルクセンブルク | +1.0 |
フランス | ▲0.9 |
スウェーデン | ▲1.5 |
イタリア | ▲1.6 |
ポルトガル | ▲2.2 |
オーストリア | ▲2.8 |
オランダ | ▲7.5 |
ベルギー | ▲7.7 |
アイルランド | ▲11.4 |
ドイツ | ▲18.0 |
デンマーク | ▲26.3 |
EU15ヶ国 | ▲3.0 |
豚および生乳価格の低下により畜産物の生産額は大幅に下落
畜産物および耕種作物共に生産量は増加したものの、生産者価格(実質。以下 同じ)がかなりの程度低下したため、生産額は農産物全体では3.5%減少した。 畜産物の生産額は、牛、羊およびヤギを除く主要産品で、軒並み減少した。特 に、豚では生産者価格の急激な低下により、前年に比べ2割の減少となった。 また、農業生産額に占める割合が最も大きい生乳では、生乳価格の低下により 生産額が7.4%減少し、全体の農業収入を引き下げる大きな要因の1つとなった。 これとは対照的に、2001年に牛海綿状脳症(BSE)および口蹄疫(FMD) により、大きな影響を受けた牛に関しては、2002年には生産量および価格が共に 回復したことから、生産額は8.8%増加した。また、羊およびヤギの生産額も4.7 %増加したが、他の品目の減少を相殺するには至らなかった。この結果、畜産物 全体の生産額は、6.5%の減少となった。 生乳に次ぐ重要産品である穀物は、収穫期に悪天候に見舞われたドイツを除き フランスやイタリアなど主要生産国で生産量が増加したものの、生産者価格の低 下により、生産額は昨年を若干下回る水準となった。また、ビートなどの品目で は生産額が増加したものの、ジャガイモやワインの生産額が減少したこともあり、 耕種作物全体では1.4%の減少となった。 ◎中東欧10カ国、2004年にEU加盟 コペンハーゲンで開催されたEU首脳会議で2002年12月13日、2004年の中東欧 10カ国のEU加盟が正式に合意された。懸案となっていた共通農業政策(CAP) の適用問題については、@直接支払い単価は10年間で段階的に引き上げること、 A直近の生産量を基にして生乳生産枠を設定することなどが合意された。 ◎EU、WTO農業交渉に関する提案を公表 EU委員会は2002年12月16日、世界貿易機関(WTO)農業交渉に関する提案 を公表した。輸入関税の36%削減、輸出補助金の45%削減、貿易歪曲的な国内補 助の半減、開発途上国への優遇措置のほか、環境対策などの非貿易的関心事項の 重要性を改めて強調する内容となっている。
【ブラッセル駐在員 山田 理 1月8日発】
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