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DAAが課徴金徴収期間の延長を勧告 豪州では、2000年7月の飲用向け生乳に対する生産者最低価格と加工原料乳 に対する価格補てんの撤廃などを内容とした酪農乳業制度改革の実施に伴い、 生産者の所得低下分などに対する補償措置が講じられた。当該補償措置の審査 ・交付決定機関である豪州酪農乳業調整委員会(DAA)は、その財源となる 飲用乳の課徴金の徴収期間に関する検討結果を昨年11月、トラス農相に報告し た。その報告によれば、課徴金の徴収期間は、政府が99年に補償措置を発表し た際には8年間とされていたが、これを2年間延長し、2010年まで徴収を継続 する必要があると勧告している。 この課徴金は、補償措置の資金調達のために導入され、国内で販売される飲 用乳の小売段階で1リットル当たり11豪セント(約8円:1豪ドル=70円)徴 収している。当初、補償措置は、8年間にわたる酪農構造調整金、酪農廃業補 償金、特別影響地域に対する総合支援計画の3本であったが、翌2001年に追加 補償措置が講じられ、総額約19億豪ドル(約1,330億円)の4本となっている。 酪農乳業改革の補償措置の財源を検証 この課徴金の徴収期間の検討は、補償措置の財源としての課徴金徴収の妥当 性について農相に勧告するため、酪農産業調整法(Dairy Industry Adjustment Act)に基づき、当初からDAAにより実施されることが予定されていた。 報告によると、課徴金は2000年7月から、2002年6月30日までに、約3億 7,200万豪ドル(約260億円)が徴収された。一方、同期間における支出は、約 5億3,300万豪ドル(約373億円)の補償金交付、2,460万豪ドル(約17億円) の管理費、約1,260万豪ドル(約9億円)の利息となっている。 DAAは、この2年間の収支実績や飲用乳消費の将来の予測、経済的な変動 (利率見通しなど)を基礎にモデル推定を行い、2010年の第1四半期まで課徴 金の徴収を維持する必要があると結論付けている。 期間延長の要因は追加措置と飲用乳消費の減少 担当したDAAのギフォード委員は、「当初は3本の補償措置であり、課徴 金の徴収も2008年頃までの予定であったが、連邦政府が、追加の補償措置を導 入したため、資金調達はさらに2年間続く見込みとなった」とマスコミにコメ ントをしている。 また、飲用乳の消費も、99/00年度の193万6千キロリットルをピークに、 00/01年度が192万キロリットル、01/02年度では191万6千キロリットルと減 少傾向で推移している。 従って、課徴金を設定した当時に予定されなかった追加補償の実施、課徴金 徴収の源泉である飲用乳消費の減少が、これまでの2年間の収支に影響を与え、 今後の飲用乳の消費予測や経済変動を勘案して、現在の補償措置を実施するた めには課徴金徴収期間を2年程度延長する必要があるという結論になったと考 えられる。 なお、この課徴金の期間延長は、連邦政府の課徴金や特別税の全般的な活用 方針に対する従来からの野党、労働党の批判をあおることになるとみられてい る。
【シドニー駐在員 粂川 俊一 1月8日発】
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