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ブラジルで新政権が発足、農業が国の礎に


 
ルラ大統領、「飢餓ゼロ」を優先課題に

  ブラジルで1月1日、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領を首班と
する新政権が発足した。132 の外国代表団が参列した就任式において、ルラ大
統領は同政権の優先課題を「飢餓ゼロ」と称する食料安全保障プログラムとす
ることを発表し、選挙中の公約であった社会政策優先の方針を内外へ明らかに
した。大統領は演説の中で、「全国民が一日に3度の食事が出来るようになれ
ば私の使命は達成されたことになる」と述べている。


農相、飢餓対策を支えるのは農業生産と強調

 農相にはロべルト・ロドリゲス前ブラジルアグリビジネス協会会長が就任し
た。同農相は1月2日の就任挨拶において、プラチニデモラエス前農相がブラ
ジル農業の発展に尽くした功績を高く称賛した後、ルラ政権が優先課題に掲げ
る飢餓対策を支えるのは、農業生産であると強調した上で、農務省の政策目標
として、食料供給の確保、農産物輸出の拡大による貿易収支の改善、組合制度
の拡充を掲げた。さらに、農業生産の拡大は、これに関連する産業全体の新規
雇用を創出し、労働者の所得を向上させ、ひいては国内の所得格差の是正にも
役立つものであると述べている。また、農相は、こうした政策目標を達成する
ための方策として次の事項を挙げた。@農務省と農業生産者の距離を縮め、質
的に高く、かつ効果的なサービスを提供する。Aこのため、農業部門に関連す
る意見窓口を設置する。B行政部門、技術部門の近代化を図り、人材の育成・
強化に努める。C外国の見本市などを通じ、ブラジル製品の販売を促進する。
D外国市場開拓のために不可欠な動植物の衛生管理を徹底する。E輸出商品の
付加価値を高めるための投資を行う。F家族農業に関する農業研究に重点を置
く。Gトウモロコシなど政府在庫の再編成を図る。H農業地域の区画を適切に
行うことで、環境を保全する。I農村所得の基本となる農村保険法を可決する。
  
  なお、飢餓対策について、農相は就任後、全国の農協に対し食料の寄贈を要
請し、これを受けたブラジル協同組合連合会(OCB)は、全国の1,600農協が1
農協当たり最低トラック1台分、計2万4千トンの食料を提供することを約束し
た。また、農相は、飢餓対策の実施によりブラジルの食料需要が拡大するとし
て、同国の主要作物の栽培面積を300万ヘクタール拡大する意向を表明した。



開発商工相は大手食品企業から抜てき
 
 また、開発商工相にはブラジル大手食品企業サジア社のルイス・フェルナン
ド・フルラン前経営審議会会長が抜てきされた。同氏は就任挨拶において、ブ
ラジル製品の付加価値を高め、世界貿易の中でさらにシェア拡大を図るととも
に、世界貿易機関(WTO)および米州自由貿易地域(FTAA)交渉、EUおよび
アンデス諸国との多国間交渉、南米南部共同市場(メルコスル)の強化など、
ブラジルが取り組んでいる重要な国際交渉について、外務省、農務省などとの
連携を強化すると述べている。一方、国際交渉に対する方針として、貿易障壁
の撤廃、市場開放については、強硬な態度も辞さないとしている。

  さらに、開発商工相は、経済開発の目標は、単に輸出の増大による経済成長
のみにとどまらず、数百万の雇用の創出と家族の所得向上を目指すものでなけ
ればならないと強調した。



新大臣就任に食肉業界から大きな期待の声

 ブラジル食肉業界を代表する一人であるブラジル牛肉輸出工業協会(ABIEC)
エニオ・マルケス専務理事は、農務省にロドリゲス大臣、開発商工省にフルラ
ン大臣が就任したことは、新政権下のアグリビジネス分野や生産者団体の強化
につながるであろうと述べ、国際交渉にも新たな展開が期待されるとしている。

 
 
【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 1月15日発】 


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