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国際約束を25%上回る関税割当枠を承認
タイ農業協同組合省は、同省の諮問機関である畜産政策・開発委員会が2003 年の脱脂粉乳の関税割当枠を承認したと発表した。2003年の割当数量は、ウ ルグアイラウンド(UR)農業協定における同年の約束水準である53,888.89ト ンを13,401.11トン上回る67,290トンとなっている。同委員会は、国内乳業 の競争力強化のためとして同省が求めていた、現行20%の枠内関税率の5% への大幅な引き下げについても承認した。割当数量と枠内税率の変更は、閣 議決定を経て7月には施行される見込みである。 タイは開発途上国であることから、UR協定の実施期間は95年から2004年ま での 10年間とされている。脱脂粉乳の関税割当枠に関する約束は、95年を4 万5千トンとして毎年1,111トンずつ拡大し、最終年である2004年の割当枠を 5万5千トンとすることとされている。割当枠内の関税率は20%だが、枠外の 輸入に係る関税率は95年の237.6%から漸次削減し2004年には216%にまで引 き下げられる予定であり、2003年の関税率は218%となっている。 高まる脱粉需要と国産生乳保護政策との間にジレンマ 今回承認された割当枠のうち、約束水準を上回る13,401.11トンの内訳は、 加糖れん乳製造業者に5,058.11トン、加工乳製造業者に6,007トン、輸出向 け乳製品製造業者に169トン、乳酸菌飲料製造業者に2,167トンとなっている。 同委員会は、今年の枠で輸入した脱脂粉乳を翌年の生産に使用させないと いう観点から、枠内輸入の期限を10月末日の通関分までとしている。また、 同委員会は、国内の酪農家の保護の観点から、枠の割当に当たっては、受給 者に酪農家との生乳買入れ契約を結ばせることが必要としているが、方法な どについては明らかにされていない。 タイの生乳生産量は、1日当たり1,300トン程度とされているが、このうち 1,200トン程度は国産生乳の使用が義務付けられている学校給食用牛乳の原 料として使用されている。このため、学校休業期間には大量の余乳の発生が 恒常化しており、昨年は10月〜11月の学期間休暇(いわゆる洪水休暇)の1 カ月間に酪農家による生乳廃棄などの抗議行動が発生している。委員会が割 当枠の使用期限を10月末日までとしたのは、同委員会が掲げた翌年の生産原 料の確保をさせないということよりも、むしろ、今年も年末にかけて予想さ れる余乳問題に関税割当をからませないねらいがあるものとみられる。 拡大傾向にあるタイの乳製品類の市場 日本では、加工乳の需要が低迷し、脱脂粉乳の需要も伸び悩んでいるが、 タイの事情はこれとはかなり異なっている。 オランダ系のフォアモスト・フリーズランド社は、5億5千万バーツ(約16 億円:1バーツ=2.9円)程度の売上があるとされる高カルシウムの乳飲料市 場に新製品を投入し、今年中に現在の55%程度とされる同社の市場占有率を 15〜20%程度引き上げることを見込んでいる。ネスレ・タイランド社は、今 年、20億バーツ(約58億円)を投資し、コーヒー・クリーマーなどの生産増 強を図る予定であり、バンコク市近郊のサマット・プラカン県にあるクリー マー製造工場は世界各地にあるネスレ社の工場の中でも最大規模のものにな る予定である。同社は、今年のタイ国内の粉乳などを中心とした乳製品市場 は前年比5〜7%程度拡大するとみており、国内での販売を強化する一方、タ イをアジア各国向けクリーマーや育児用調製粉乳の輸出基地とすることを計 画している。 【シンガポール駐在員 小林 誠 6月25日発】
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