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「食品安全年」に向けた取組み活発化
タイ政府は2004年を「食品安全年」とし、食品衛生環境の改善や食品検査 の強化など各種キャンペーンを展開している。 同国政府は先月17日の閣議で輸出入農産物の品質検査を行う検査機関の設 立を承認した。設立予算は19億5千万バーツ(約56億6千万円:1バーツ=2.9 円)で当初の株式の 49%を財務省が保有することとしている。第1段階とし てバンコク市内に本部を置き、国内に 5カ所の支所を設け、年間40万件の検 査を行える体制をとると計画されている。一方、農業協同組合省畜産開発局 (DLD)は国内飼料製造業者に対しGMP(適正製造基準)およびHACC P(危害分析・重要管理点)システムを導入するよう指導し、大手5社をこれ らのシステムを導入した業者であると認定した。同局によると段階的に国内 飼料業者に同様の認定を行うことにより国際競争力の強化を図るとしている。 DLDはまた、このキャンペーンの方向性に沿って、国内の主に中小養豚 業者による団体から要望されていた官民共同の養豚委員会の設立に関する協 議の中で、第1歩として下記の諸問題を検討するためのワーキンググループ を設けることとした。 ・養豚場の登録制度、標準化を含めた基準作成について検討し、国内需給安 定の方策を探る。 ・と畜場の衛生基準について検討し、適切な管理水準への移行を促す。 ・流通、小売段階での取扱基準について検討する。 ・養豚、豚肉製造の両段階での管理・衛生基準について検討し、薬剤残留問 題を排除する。 食品大手、CPF社の動き 政府主導による各種取り組みがされる中、同国食品会社大手チャロン・ポ カパン・フーズ(CPF)社は食品の安全性を前面に打ち出した新工場の建 設や主に輸出を念頭においた新商品を相次いで発表している。 同社傘下チャロン・ポカパン・マーチャンダイジング社では従来冷凍鶏肉 の製造を基幹としていたが近年、輸出市場で信頼を得ているCPブランドを 冠した加工品へ重点を移行している。最近では高級志向の顧客層を狙い、20 種のスパイスで味付けした鶏肉加工品「Q-Bite」を発表した。2002年のC PFグループ全体の冷凍鶏肉輸出額は約50億バーツ(約145億円)であるのに 対し、鶏肉加工品は約70億バーツ(約203億円)となっている。 大規模豚肉高度加工工場建設を計画 一方、同じくCPF社のスポークスマンによると傘下の子会社に2億バーツ(5 億8千万円)を投入して豚肉高度加工工場を建設するとしている。この新工場 は同国東部チャチェンサオ県に面積約3万7千平方メートルの規模で2004年末 の操業開始を目標に計画されており、3千万バーツ(8千7百万円)を投入して 従来のものに比べて長期の保存を可能にする包装機械を米国から導入し、E Uや米国の製品に対する競争力を高めることとしている。 また、近年、国内に流通する食肉で近年相次いだ薬物残留問題については 同グループが独自に規定する飼養管理・衛生基準により、同様の問題を厳密 に排除するとしている。 同社によると、この工場で製造した加工品の当面の主な輸出先として、豚 肉の輸入を禁止している日本などに対しての調理品の輸出を想定しているほ か、保存期間の延長により国内市場での売上増にも結び付けたいとしている。 【シンガポール駐在員 木田秀一郎 7月2日発】
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