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CAP改革合意に関係団体から批判
EU農相理事会は6月26日、EUの共通農業政策(CAP)の改革に合意し た(海外駐在員情報第584(7/1)号参照。)。EU委員会のフィシュラー委員 (農業担当)等からは合意内容を自賛する内容のコメントが発表されているが、 その一方で、関係団体から合意内容を批判するコメントが発表されている。 CAP改革全般に対する批判 欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA) 1 欧州の農業者と欧州の農業協同組合は、今回のCAP改革の結果に失望 している。これまでで最もドラマチックな改革であるが、これは同時に CAPと農業の将来を傷つけるものである。欧州の農業の競争力は現在 、危険な状態にある。 2 今回の改革で、生産コストに対して、農産物の販売価格が低くなり、こ のことが農業者の生産中止につながり、協同組合にとって非常に厳しい 結果となる。 欧州消費者協会(The European Consumers’Organisation) 1 欧州の消費者は引き続き、国際市場に投売りする食料のために負担を続 けなければならない。 2 欧州の農業政策は、少数の関係者によって支配されており、欧州連合全 体の利益のためにはなっていない。今回の改革は不十分で、今後とも真 の改革のため、精力的に活動を続ける。 国別または地域別に生産に結び付いた直接支払いを継続することに対する批判 COPA/COGECA 1 今回の合意は、ア・ラ・カルト(a la carte)と呼べるほど、直接支払 い制度について、多くの選択肢(option)があり、施策の国別実施 (renationalisation)となりかねない。このことがCAPを著しく害 することになる。 2 (国別に選択肢を選べることとなることから)農業者同士、各部門同士、 地域同士、国同士の競争をゆがめることとなる。 イングランド全国農業者連合(NFU) 各国が生産と結びついた直接支払い制度を継続できる多くの選択肢がある ことから、各国が異なる施策を実施し、このことが、市場競争をゆがめるお それがある。このようなことから、NFUは、EU委員会とイギリス政府に 各国の政策を監視するように求める。 しかし、直接支払い制度に関し、生産からの切り離しを一層推進すること により、農業者が市場動向に応じた農業に取り組みを行うことは歓迎する。 酪農関係団体の多くが、強く非難 一方、各国の酪農関係団体の多くが、乳製品の介入価格や酪農家に対する直 接支払い制度の合意内容は、酪農に重大な悪影響を及ぼすと強く非難するコメ ントを発表している。 その内容は、@バターと脱脂粉乳の介入買い入れ価格が引き下げられ、バタ ーについては、買い入れ数量に上限が設けられたこと等から酪農家の収入が減 る、A酪農家の生乳出荷量に対する直接支払いの金額が少なく、介入買い入れ 価格の引き下げに見合っていないというものである。 また、改革実施に備えた経営改善が必要とする意見がある一方で、生乳生産 割当制度が継続されることや、今後の施策の運用等が不明であることから、酪 農家に直接支払いが適用されるまでは経営改善に取り組まなくても良いとのコ メントを発表している団体もある。
【ブラッセル駐在員 関 将弘 7月9日発】
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