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豪州農相が南米歴訪 豪州連邦政府のトラス農相は7月上旬、南米諸国を訪問し各国首脳との会談を行 った。ウルグアイとアルゼンチンでは農業分野における協力関係に関する「覚書」 (Memorandum of Understanding)に調印し、チリとはFTAを主な議題に会談 を行った。多くの国がケアンズ・グループに属する南米諸国との関係の緊密化を図 り、今後の世界貿易機関(WTO)交渉における連携を強化する動きの1つとみら れる。 ウルグアイとは動植物検疫に主眼を置いた協力体制の強化 トラス農相は7月3日、ウルグアイのゴンザレス農牧水産大臣との間で、豪州と ウルグアイが食料や貿易、農業の問題に協力することに関する「覚書」に調印した と発表した。「覚書」は、動植物の害虫や病気の侵入、発生、拡大を防ぐための技 術的な協力を含むとされる。 この「覚書」について同農相は、「WTOにおける動植物検疫や食品安全性など に関する議論において、両国の関係を強化することや、両国間の貿易量は大きくは ないものの、豪州の輸出機会を増やすことなどの将来的な可能性にも期待している 」と述べ、また、「ケアンズ・グループの仲間として、実際にゴンサレス農牧水産 大臣とWTO交渉のドーハ・ラウンドに関して極めて有益な会談を持ち、ウルグア イが農産物貿易改革の重要性について豪州との見解を共にすることを疑わない」と 信頼の意を表している。 なお、同農相によれば、ウルグアイは、口蹄疫清浄化により海外市場へのアクセ スを回復したことから、豪州で昨年実施された口蹄疫模擬演習「ミノタウロス」 (「海外駐在員情報」平成14年10月1日号参照)に非常に関心を示したとされる。 チリとはFTAを主な議題に会談 トラス農相はウルグアイ訪問に先立ち、チリのロドリゲス経済大臣やカンポス農 業大臣と自由貿易協定(FTA)を主な議題に会談を行った。豪州側の関心はもっ ぱら、先月調印されたばかりのチリと米国のFTA交渉にあったようで、同農相は 、「米国とのFTA交渉におけるチリの経験は、われわれのFTA交渉のために有 益な情報と確信を与える」としている。 また、同農相とカンポス農業大臣は、豪州とチリの間における研究・開発やバイ オセキュリティー、技術的問題についての農業分野の協力に関する「覚書」の調印 に向けて協議することに合意した。 アルゼンチンでは調査・研究の協力体制の強化 続いてトラス農相は7月8日、アルゼンチンのカンポス農牧水産食糧庁長官との 間で、豪州農業資源経済局(ABARE)とアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ 、ウルグアイの加盟国による南米南部農牧審議会(仮称:CAS:「海外駐在員情 報」平成15年6月17日号参照)の調査・研究などに関する協力を促進する「覚書」 に調印したことを発表した。 ABAREが豪州の農業政策におけるシンクタンク的な機能を持ち、一方、CA Sが南米南部諸国の国際交渉力の強化を目的に設置されたことから、この「覚書」 に対して同農相は、次のような効果を期待している。 @ 南米におけるカウンターパートと協力することによって、豪州の政策に関する 調査・研究は、農業貿易問題についての報告精度や分析能力を向上 A 世界の農産物市場の改革に対する問題を議論するために必要な豪州の能力向上 が図られることによって、豪州の農民を支援 B 農業保護貿易主義との戦いにおいて両地域の農業と貿易の交渉担当者を支援加 えて、「ケアンズ・グループの政策の調査・研究において、WTOに関わる問 題により緊密に取り組むことによって、改革を加速できる」としている。 【シドニー駐在員 粂川 俊一 7月9日発】
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