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「食品安全年」に向けた取組み活発化輸入禁止解除を示唆
世界貿易機関(WTO)は、6月28日と30日の2日間にわたって、インド ネシアについて2回目の貿易政策検討会を開催した。WTOはマラケシュ協 定の付属書3に従って、構成国の貿易関連政策を定期的に評価し、世界の貿 易に影響を与える可能性のある政策変更の監視を行っている。インドネシア の政策検討が行われたのは、1998年に続き2度目である。検討会には、対象 国政府による報告書とWTO事務局による報告書が提出され、WTO加盟国 による詳細な検討が行われた。 今年5月28日付けで検討用に提出されたイドネシア政府の報告書によれば 、米国産鶏肉(モモ肉)の輸入を禁止した理由は、処理過程でハラル(イス ラム教の教義に従った処理)が順守されていないためであるとしている。輸 入を禁止した当時、同国政府は、非公式ながら、輸入禁止の理由として国内 産業の保護と米国産鶏肉のハラル表示への不信を挙げていたが、公式の場で 理由を明らかにしたのは初めてのことである。さらに、まだ検討段階である としながらも、政府は輸入禁止措置を解除することを示唆している。 関税率の引き上げで国内生産保護を示唆 同国政府は、本来、消費者保護を目的としたハラル表示の信頼性に基づく 輸入禁止措置による間接的な生産者保護を廃止し、関税率の引き上げによっ て正面から国内産業を保護することも示唆している。同国のブロイラー生産 者は、現在の実効税率である5%を100%に引き上げるよう要求しているが、 譲許税率である40%までの引き上げが最大であるとみられる。同国のブロイ ラー生産は、97年の通貨危機によって、トウモロコシなどの輸入飼料が現地 通貨ベースで高騰したことにより、中小・零細層が大きく脱落しており、年 間55万トン程度のブロイラー生産量の約9割はコムフィード社などの大手イ ンテグレーター7社が生産している。飼料の輸入依存度が高いため、大手で あっても生産コストは高く、米国産の鶏肉の競争力は脅威となっている。 事務局、政策の透明性の向上を要望 一方、6月30日に提出されたWTO事務局によるインドネシアの貿易政策 に関する報告書は、特に米や砂糖といったセンシティブな分野における貿易 政策が場当たり的にみえるとし、透明性の向上と公的な監視が必要であると している。米国産鶏肉については、輸入規制の不透明な例として言及してい る。 インドネシアの米国産鶏肉輸入禁止措置がいつから実行されたのかについ ては、2001年1月、同年5月など異なる報道が見られるが、WTO事務局の 報告書では同国畜産総局長通達が出された2000年9月としている。この通達 では、モモ肉など米国産を中心とした鶏肉の輸入を禁止しているが、輸入禁 止の開始時期や適用期間などの指定がなく、同年7月には通関現場で行われ ていたとされる実質的な輸入禁止措置を追認したものとなっている。 米国ではムネ肉が好まれるため、商品価値の低いモモ肉などを低価格で輸 出しており、東南アジア各国で国内産業に影響を与えるダンピング輸出とし て反発が続いている。インドネシアのマスコミには、「米国では鶏モモ肉は もっぱら飼料用」という表現も多々見られ、この問題の背景には、産業政策 上の対立以外にも感情的な側面があることがうかがえる。 【シンガポール駐在員 小林 誠 7月9日発】
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