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政府・業界がプロジェクトに資金供給 豪州の生体家畜輸出をめぐっては昨年の輸送家畜の大量死に端を発して、中東向 けについて条件付きの暫定輸出禁止措置が実施された。その後、出荷に当たっての 安全管理基準の強化が図られたことから、今年5月にその措置が解除されたところ である。なお、最近の生体牛輸出動向については、豪ドル高や今後の素牛不足が懸 念されるものの、主にアジア市場での需要増によって好調に推移している。 こうした中、豪州連邦政府のトラス農相とベール貿易相は7月18日、政府と生体 家畜輸出業界が中東と北アフリカにおいて、輸出された家畜の取り扱いを改善する ためのプロジェクトに15万豪ドル(約1,200万円:1豪ドル=78円)を資金供給す ることを発表した。この資金供給は、中東と北アフリカにおける国境地域での移送 設備や港での陸揚げ、と畜場の衛生・安全基準、家畜業者の教育訓練などの改善の ために使われる予定で、その負担は、業界が10万豪ドル(約800万円)、政府が5 万豪ドル(約400万円)となる。 相手国側での動物福祉対策改善に期待 今回発表されたプロジェクトは、@家畜の熱に対するストレスを算定する出航前 の危険分析の開発(政府や業界、動物福祉団体からの意見に基づき2002年後半に策 定された行動計画に基づく)A厳格な動物福祉条件を満たさない業者に対する輸出 許可書の発行中止など生体家畜貿易の手続きの見直し−に引き続くもので、中東と 北アフリカ向け生体家畜貿易の改善を主に相手国側で実施することを目的としてい る。 なお、連邦政府は、輸送家畜問題を含む貿易関連の研究開発資金として毎年約60 万豪ドル(約5,000万円)を負担している。 トラス農相は、「年間10億豪ドル(約780億円)にも上る生体家畜貿易の豪州経 済に対する重要性を認識している」とした上で、「動物福祉に関する社会的関心に 対応した牧場から最終の顧客までの全体を保証することが必要であり、このプロジ ェクトは輸出家畜の状態のさらなる改善にはずみをつける」と期待している。 エジプトからは資金供給の対応も 中東に輸出された豪州産生体牛の大部分が処理されるエジプトでは、生体家畜輸 出団体であるライブ・コープが動物福祉の観点から、自ら過去2年にわたってと畜 場において技術支援を行ってきた。今回のプロジェクトに対応して、エジプト政府 も家畜の取り扱いを改善するために50万豪ドル(約4,000万円)近くを投資するこ とを決定している。 ライブ・コープでは、「生体家畜貿易は、特に干ばつ期において、豪州の農産物 輸出や地域経済にとって極めて重要である。この種のプロジェクトは、業界で何度 か検討していたものであるが、豪州と異なる宗教や文化を持つ国々に西洋的な基準 を負わせるというセンシティブな問題を認識して取り組む必要があった」と今まで の努力が報われたとして、エジプト政府からの資金供給をその成果の1つに挙げて いる。ベール貿易相も同様にエジプト政府に感謝の意を表している。 メキシコ・ヒダルゴ州とは施設整備の合意も そのほか、生体家畜に関してはメキシコとの間でも動きがあった。7月上旬に南 米諸国を歴訪(「海外駐在員情報」平成15年7月15日号参照)したトラス農相は引 き続きメキシコを訪問し、14日に同国ヒダルゴ(Hidalgo)州と農畜産業分野にお ける協力に合意した。豪州のメキシコ向けの主な農畜産物は食肉、生体家畜、羊毛 であるが、ヒダルゴ州は最近豪州から生体牛や生体羊を輸入しており、今回の合意 の中では豪州製のと畜処理設備を導入することも含まれている。 【シドニー駐在員 粂川 俊一 7月24日発】
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