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米農務省、放射線照射済牛ひき肉を購入へ 米農務省(USDA)は5月29日、学校給食プログラム向けに放射線照射済みの牛ひ き肉を追加すると発表した。ムラノ食品安全担当次官は今回の発表に際して、「食 中毒から国民を守ることがUSDAにとって最重要課題」とし、食品の病原菌抑制に関 する放射線照射の有効性などについて述べた。 2002年新農業法は、学校給食プログラム向けに購入する食品について、食品の安 全性を向上させる技術を用いて製造された食品の使用を妨げないとしていた。USDA では今回の発表と合わせて、牛ひき肉の購入に係る仕様書の改正を同日付けで行い、 「冷凍牛ひき肉」に「放射線照射済み10ポンドパック(1カートンに真空包装した もの2パック入り)」および「牛ひき肉パテ(密封または真空包装トレイ入り)」 の2品目を追加した。なお、これらは食品医薬品局(FDA)の定める放射線照射基 準に合致し承認されたものとしている。 使用は各校の判断 同プログラムは、USDA食品消費者局(FCS)が行う食料・栄養プログラムの一環 として46年から実施されており、現在約2,700万人の児童・生徒がその対象となっ ている。USDAは今回の発表で、放射線照射済みの牛ひき肉を使用するかどうかは同 プログラムに参加している各校の判断に任せるとし、各校は使用の是非を2004年1 月までに決定する必要があるとしている。今後各学校は、児童・生徒およびその親 などに対し使用の是非について確認を取ることとなる。USDAでは今後、その使用を 積極的に推進するとしており、放射線照射済み食品に関する Q&Aや病原菌抑制効果 などについてのガイドブック、パンフレットの配布や学校が児童・生徒やその親な どを対象に実施する教育プログラムなどにUSDAから専門家を派遣するなどとしてい る。 業界団体からは歓迎のコメント 今回の発表に対し食肉業界は歓迎のコメントを出している。 食肉加工業者の団体である米国食肉協会(AMI)は5月29日、USDAは今回食品の 安全性の確保に対して賢明で重要な決定を行ったと歓迎の意を表している。なお、 AMIは昨年USDAに対し、放射線照射済み牛ひき肉を学校給食用に購入するよう要請 していた。また、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)もAMI同様にUSDAの発表を歓 迎するとともにその使用の推進についてUSDA支援するとしている。 なお、今年1月からミネソタ州の一部の学校においては、食品の安全と放射線照 射食品についての教育プログラムが試験的に実施されている。これまで放射線照射 済み牛ひき肉を導入することに対して慎重な態度をとってきたUSDAであったが、近 年増加する食中毒発生による食肉の自主回収や食品の安全性確保の面を勘案すると 購入品目の中に放射線照射済み食品を追加せざるを得なかったものと思われる。今 後、学校給食プログラムに参加する学校の何割が放射線照射済み牛ひき肉を導入す るのか、その動向が注目されるところである。 【ワシントン駐在員 道免 昭仁 6月4日発】
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