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2003/04年度の冬穀物生産量、回復の見込み(豪州)
かんがい用水依存の夏穀物はなお不作予測
豪州農業資源経済局(ABARE)は6月10日、四半期ごとに発表されている穀物生産
量予測について最新の報告を発表した。
今回の報告では、エルニーニョ現象が終了し、干ばつの影響は一部の生産地を除き
緩和されてきているとした上で、今後の降雨を前提条件として、2003/04年度の冬穀
物については、生産量は大幅に回復し、なかでも小麦や大麦は平年ベースまで回復す
るとみている。一方、夏穀物については、02/03年度は収穫がほぼ終了し、予想通り
20年ぶりの不作見込みとなったが、03/04年度もかんがい用水不足の影響は続き、9
月には作付時期を迎える米や綿実といったかんがい用水に依存する穀物の生産量の回
復は遅れるとみている。
○冬穀物
6月初旬までには冬穀物の作付けの80%を完了している。今後、平年並みの雨量に
戻ることを前提にすれば、小麦や大麦の作付けはまだ可能であることから、03/04年
度の冬穀物主要4品目(小麦、大麦、カノーラ、ルーピン)の生産量は、前年度に比
べ2倍以上の約3千万トンと見込んでおり、平年レベルに近い生産量に回復すると予
測している。
03/04年度主要4品目生産量予測(単位:千トン、%)
品名 |
02/03年 |
03/04年 |
増減率 |
小麦 |
9,385 |
21,662 |
130.8 |
大麦 |
3,268 |
6,657 |
103.7 |
カノーラ |
621 |
1,274 |
105.2 |
ルーピン |
537 |
1,028 |
91.4 |
計 |
13,811 |
30,621 |
121.7 |
○夏穀物
02/03年度の夏穀物の収穫はほぼ終了し、生産量は前年比 56%減の約230万トン
となった。前回報告(2月)の予想通り、82/83年度の干ばつ以来最も少ない収穫
である。米や綿実の主産地であるニューサウスウェールズ(NSW)州のかんがい
用水量は、現状(5月末)でも昨年に比べかなり少なくなっており、03/04年度も
かんがい用水不足が懸念されている。
主要品目の02/03年度生産量(推計)および03/04年度の生産予測は次の通り。
かんがい用水に依存する穀物の生産量は、冬穀物に比べ干ばつの影響からの回復
が遅れることが予想されている。
03/04年度目主要品目生産量予測(単位:千トン、%)
品目 |
02/03年(推計) |
03/04年 |
増減率 |
米 |
391 |
500 |
27.9 |
綿実 |
456 |
353 |
▲22.5 |
ソルガム |
935 |
2,048 |
119.0 |
予測は楽観的過ぎるとの見方も
一方、トラス農相や食肉産業界ではABAREの予測に反して、悲観的な見方を
している。
報道によると、トラス農相はABAREの予測は、作付けの終わる6月中の適度
な降雨を前提にするなど余りにも楽観的過ぎると、発表後直ちに反論し、「将来の
見通しは、依然として極めて不安定」と述べている。
また、豪州食肉諮問委員会(RMAC)では、今回の報告の修正を求め、次のよ
うに指摘している。
・NSW州、クイーンズランド州、西オーストラリア州の放牧地の大部分では依
然干ばつが続いている。
・6月中旬から雨が降ったとしても牧草の生育にはあまりにも寒すぎ、かつ、遅
すぎる。また、干上がった貯水池を満たすほどの雨量があるか疑問である。
・穀物の作付面積の増加が干ばつの終了を示すものではない。フィードロット業
者は飼料不足で危機的状況にあり、予測値が改善されても、市場に利用可能な
飼料が無いことが問題である。
・今回の報告は、農家にとって偏った非現実的な見方に映るだけで、農家が苦境
に陥っていることに対する都市部の理解を喪失してしまう。
【シドニー駐在員 井上 敦司 6月19日発】
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