ALIC/WEEKLY
ブロイラーの価格回復
マレーシア農業省獣医局の観測によると、5月後半のブロイラー市場価格 は好調を維持している。マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)公表による 4月中旬の卸売指標価格では1キログラム当たり 2.3リンギ(71.3円:1リ ンギ=31円)から、3.3リンギ (102.3円)にまで回復している。ただし農家 出荷価格はこれをわずかに下回る3.1リンギ(96.1円)となっている。同国で は5月下旬以降の暑熱により生産率が低下するとともに、供給過剰が長引い たことから価格が低迷し、生産コストを割り込んだ期間が長期化したため、 生産調整や離農が進んだことなどから、供給量が適正水準に落ち着きつつあ るものとみられている。加えて例年6月初旬の学校休業期間には需要増とな ることも価格回復の要因とみられる。 中国産家きん肉等輸入停止の影響 同国獣医局は5月29日、同12日に中国から日本へ輸入されたあひるの肉か ら鳥インフルエンザウイルス(血清亜型H5N1)が分離され、同日付で日本が中 国からの家きん肉等の輸入を一時停止することとしているが、同国でも22日 付けで同様の措置をとることとしたと発表した。同局では、家きんおよび野 生鳥類に伝染し、高い死亡率を示す鳥インフルエンザ(家きんペスト)のま ん延を防止するとほかに、人への感染も指摘されていることから人畜共通伝 染病の予防という意味もあって、今回の輸入停止措置に踏み切ったとしてい る。 同局は、当分の間、中国以外から輸入される家きん肉に対しても検査を強 化するとともに、中国当局からの科学的情報に基づき今後の対応を決めるこ ととしている。 また、FLFAMは、同21日に開かれた同局との会合で輸入停止措置の説明を 受けたとし、その話し合いの中で、国産ブロイラー肉は市場で供給過剰の状 態にあり、輸入停止による需給のひっ迫は起こらないとした。しかし、今回 の輸入停止措置が当面の高値安定を下支えする要因として期待されている。 同局の統計によると中国からの鶏肉輸入量は今年1月から4月までの合計 で 7,100トンとなっている。中国産は国産よりも 20〜30%低価格で、品質 的にも国産のものと遜色がないとされている。また、価格差はミドルマンと 呼ばれる仲買業者に吸収されるため、消費者価格には反映されない。 鳥インフルエンザ(家きんペスト)に対する各国の対応 タイは、2001年のブロイラー輸出量が 31万トンに達する東南アジア最大 の鶏肉輸出国であるが、日本が、中国から家きん肉等の輸入を停止したこと により、日本向け輸出が増加することが期待される。同国の鶏肉輸出につい ては、その他世界各国からの需要も同様に急激に高まっており、中国の鳥イ ンフルエンザ問題はその要因の1つに過ぎない。 また、フィリピンはマレーシアに次いで鶏肉輸入量が多い(2001年ブロイ ラー輸入量は1万1千トン)が、現在までに中国産家きん肉の輸入停止は表 明していない。同国は今年2月下旬にドイツ及びオランダ産家きん肉の輸入 を停止した際には国際獣疫事務局(OIE)の報告を根拠にしており、今回も 同様の措置をとるものと思われる。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 6月19日発】
元のページに戻る