ALIC/WEEKLY


EU委員会、各国独自助成の事前承認を一部廃止


事前承認を一部廃止
 EU委員会は、加盟各国が農業分野において独自の助成を実施する際、その助成
の実施により競争をわい曲しないようにするためなどから、事前承認を行ってきた。
しかし、EU委員会は2月19日、委員会による事前承認を、特定の助成については
必要としないこととし、そのための規則の素案を発表した。

事前承認を必要としないとされたものは以下の通り。

・生産拡大に結びつかない投資(環境保全対策など)への助成
・伝統的な景観や建物の維持経費への助成
・農産物の加工・販売活動への助成
・若者の就農への助成
・早期離農者への助成
・高品質農産物生産への助成
・農業者の集団等の設立への助成
・農家の技術習得など技術的支援への助成
・家畜登録簿の維持管理、革新的家畜育種技術の農家への導入等への助成
 
助成の迅速、促進が目的
  
  EU委員会は、この措置は、行政の事務の簡素化とEU委員会が行う各国の施
策についての調整業務の効率化の両方を成り立たせるものであり、施行されれば、
加盟国は農業分野へのさまざまな助成をよりすみやかに実施できるようになると
している。

  さらに、この措置によって、各国独自の環境保護対策、動物福祉対策、農業分
野における衛生対策などが促進されることとなるとEU委員会は説明している。
これは、例えば「生産拡大に結びつかない投資への助成」の場合には、実施の条
件として、農場が環境の保護、家畜衛生、動物福祉などに関するEU基準を満た
すことを付加することとしているからである。

  また、EU委員会のフィッシュラー委員(農業・農村開発・漁業担当)も、
「各国はよりすみやかにに農業分野への助成を実施することができるようになり
、農家が直面している問題に対して迅速な対応が可能となる。また、今回の措置
は、農業についての規則の仕組みを単純にする大きな一歩としたいEU委員会の
意図が良く表われている」と語っている。

各国の対策の調整

  一方、案では、事前承認の廃止に伴い、加盟各国が規則を順守しているかどう
かを EU委員会が確認できるように、加盟各国に事後報告書の提出を求めるこ
ととしている。さらに不適切な助成が実施されているとの指摘などがあった場合
には、EU委員会がそれに対して調査を行うことができる。

  EU委員会は、「今回の措置は、各国における助成ルールを実質的に緩和する
ものではないこと、とりわけ農業への助成を各国の自由にさせEU域内市場政策
と矛盾する各国独自の助成を認めるものでは決してない」と説明している。

  EU委員会は、この案について、加盟各国との協議を行い、その後、規則案を
公表し、関係者からの意見徴収を行うこととしている。2003年末までには規則を
採択し、2004年1月からの適用を計画している。
 
【ブラッセル駐在員 関 将弘 2月26日発】

元のページに戻る