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養豚場の順次閉鎖を発表
マレーシア農業省は、2月18日、国の進める集中養豚地域化計画の一環とし て、ふん尿や排水による環境汚染や禁止薬剤の使用・残留などによる健康被害 を引き起こす養豚農家を今年12月末日までに閉鎖すると発表した。同省は、今 回の決定について、養豚場からの排水などによる水質汚染の深刻化や悪臭に対 して養豚場周辺住民からの苦情が相次いだことなどから、これらの問題解決の ために行われた措置であると説明している。さらに、同省は、2007年1月1日に 完全実施を予定している集中養豚地域の導入に向け、環境条件などを満たして いる養豚農家についても順次閉鎖・移転を推進していく意向を表明した。 同省は、今年中に廃業する養豚農家や2006年末までに集中養豚地域への移転 が行えず廃業を余儀なくされる養豚農家に対して、他の畜種や耕種などへの転 換のための技術研修を実施する意向だが、研修計画の詳細や移転に係る費用へ の補助政策などの詳細は一切公表していない。
養豚農家免許制と集中養豚地域 マレーシアは、各州の養豚規制法規に基づく養豚農家免許制を導入しており、 州により免許の交付に必要な環境基準が若干異なるものの、農業省の求める共 通事項として、@従来から養豚農家が立地している地域内にあること、Aイス ラム教徒住民の住居、イスラム寺院、水路から離れていること、B各州の定め るふん尿・汚水処理施設を有することが定められている。同省は、各州に集中 養豚地域の設置を推進するよう求めるとともに、設置に際しては、これらの基 準を満たした上でさらに、閉鎖型豚舎の場合には半径300メートル、開放型豚 舎の場合には同500メートルの緩衝地帯を設けるよう求めている。 州ごとに異なる養豚政策 政府は、州ごとに養豚政策が異なることから、一部の州では養豚農家が不公 平な競争条件に置かれている上、環境対策が不十分な養豚農家が環境汚染を引 き起こしているとして、89年に養豚の近代化と環境対策を含む集中養豚地域計 画を定めた。集中養豚地域では、農業省獣医局がと畜から豚肉の加工・販売ま でを含めた監督に責任を負い、禁止薬剤の使用・残留による消費者の健康被害 を防止する。ネグリ・セランビン州は、92年、国内で最初に集中養豚地域を設 置したが、99年にウイルス性脳炎が同州内で発生し、その後全国で養豚関係者 を中心に 118名の死者が出たことによりとん挫していた。このような経緯はあ るものの、今回、内閣は集中養豚地域計画の本格化に伴い、第1号として、す でにある程度準備の進んでいた同州タナメラA地区への集中養豚地域の設置を 承認した。 対応に苦慮する生産者団体 養豚農家などが加盟するマレーシア畜産農家協会連合会は22日、当事務所か らの取材に対し、今回の政府発表には移転対策などの詳細が含まれていないた め、現在のところ対応を決定しかねているとしている。同協会によれば、99年 の疾病発生まで、同国はシンガポールを中心に年間2億リンギ(約66億円:1リ ンギ=33円)の豚肉を輸出していたが、現在では同4億リンギ(約132億円)の 輸入国に転じている。同協会は、今回の発表はやや唐突な感もあるとしながら も、農業省も貿易収支上の問題を重く受け止めており、衛生上の問題さえ解決 できれば豚肉も有望な輸出産品になり得るとみていることから、国内で養豚が まったく立ち行かなくなるような施策はとらないだろうとみている。
【シンガポール駐在員 小林 誠 2月26日発】
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