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高病原性鳥インフルエンザが発生
オランダ農業自然管理漁業省は3月1日、養鶏の盛んな地域である中東部のヘル デルラント州の6農場で鳥インフルエンザが発生した疑いがあると発表した。翌2 日には、同国の国立獣医学研究所での確定診断により、高病原性鳥インフルエンザ (HPAI)であることが確認された。 鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスの感染により引き起こされる 疾病で、食欲や産卵率の低下、呼吸器系の症状などがみられる。伝播は接触のほか 空気、水などを介して起こり、鶏から鶏への伝播は容易に起こるため、伝播速度は 比較的早い。鳥インフルエンザのなかでも、高病原性鳥インフルエンザは家禽ペス トとも呼ばれ、致死率が非常に高いことで知られている。 なお、1997年および2003年に香港で鳥インフルエンザが人にも感染した例が報告 されているが、今回のオランダにおける発生では、人への感染の危険性はないと見 られている。 鳥インフルエンザの発生が疑われるとの報告が、オランダ政府に入ったのは2月 28日の夕刻であった。同国政府はEU委員会の担当部局と協力して、EU指令(理 事会指令92/40/EEC)に基づく以下の防疫対策を直ちに実施した。 @ オランダ全域での生きた家きんの市場、展示会、その他のイベントの禁止(3 月1日午前1時30分から) A 発生が疑われる農場の周囲10キロメートル以内での生きた家きん、卵、ふん尿 の運搬禁止(同午前1時30分から) B 生きた家きん、卵(消費用卵を除く)、ふん尿の運搬禁止措置のオランダ全域 への拡大(同正午から) C 生きた家きんおよび卵のオランダからの輸出禁止(同正午から) D (感染源となり得る)接触のあった生産物、飼料、家畜についての家畜・食肉 検査局による追跡オランダ政府の迅速な対応にも関わらず、3月2日時点の感 染農場数は16ヵ所に増加し、感染拡大防止のため殺処分が開始されたものと見 られる。 EUレベルでの防疫措置を採択 こうした状況を受けて、EU委員会は3月3日、オランダでの高病原性鳥インフ ルエンザの発生に対するEUレベルでの防疫措置を決定し、3月6日まで(後に3 月13日まで延長)生きた家きんおよび卵について、オランダから他の加盟国および EU域外への輸出を禁止した。 また、3月10日に開催が予定されているフードチェーン・家畜衛生常設委員会に おいて、直近の発生状況を勘案して、EUレベルの防疫対策が再検討される見込み である。
オランダは世界有数の鶏肉・鶏卵輸出国 オランダの鶏肉生産量(2001年)は70万1千トンで、EUの中で第6位である。 しかし、輸出量は多く、生産量の5割以上を輸出している。また、鶏卵の生産量 (2001年)は、109億7千万個で、このうち6割以上を輸出している。殻付き卵につ いては、世界最大の輸出国である。このため、鶏卵の輸出停止が長期化した場合 には、同国の鶏卵業界が被る経済的損失は、計り知れないほど大きくなるものと 予想される。 なお、日本も3月3日から家きん肉、内臓、生きた家きん、卵等について、オ ランダからの輸入を停止している。日本のオランダからの鶏肉輸入実績(2001、 02年)はない。鶏卵(卵白)輸入量(2002年)は2,479トンである。
【ブラッセル駐在員 山田 理 3月7日発】
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