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伸びる国内豚肉消費
タイにおける2001年の豚肉生産量は38万8千トンで、前年比22%の増加、1 人当たりの年間消費量は6キログラムと、前年を1キログラム上回る大幅な増 加を示している。また、冷蔵豚肉の輸出量は約1万トンと前年に比べほぼ倍増 しており、その内訳は鶏インフルエンザの影響による鶏肉代替需要のある香港 への9千8百トンが突出し、ブルネイ、マレーシアへの輸出も急増している。 このように、近年高まる内外の豚肉需要に応えるため、同国政府は安全性を 確保するためのさまざまな衛生面での取り組みを開始した。 と畜場の衛生条件の改善 同国では昨年末の政府の組織改革に伴い、と畜場の所管が内務省から農業協 同組合省畜産開発局に移された。同局は現在、国内の既存と畜場の運営に関し、 国際基準に基づいた新たな衛生基準を設けることを検討している。新基準の施 行時には、既存のと畜場の操業許可をいったん取り消し、新基準に適合した施 設にのみ再操業許可を与えることにより、衛生状態の改善を図ることとしてい る。また、同局は、既存施設を改善あるいは移築するための予算措置について も検討中であり、民間企業数社はすでにと畜場の移築に関して免税を要望して いる。 薬物使用に関する措置 バンコク市内の主なウエットマーケット(伝統的な対面販売市場、食肉は常 温で流通)で政府による食品検査が実施され、人体に有害な薬物の使用が検出 されている。今年1月末の調査によると、検査された豚肉のうち全体の85%に 相当するサンプルから肉の発色を良くする効果があるといわれているサルブタ モルが検出されており、40%からはホウ砂(ホウ酸ナトリウム)の使用が見つ かっている。食肉の防腐剤や発色剤などとしてこれら人体に有害な薬物が使用 されているのを防止するため、同国衛生省は2月からすべての地域で抜き打ち 検査を実施し、特に有害とされるホルマリンなどの防腐剤、漂白剤、防虫剤お よびホウ砂などの発色剤の使用の有無について検査するとしている。また、こ れらの使用が発見された場合は、2年以下の禁固もしくは2万バーツ(5万7 千円:1バーツ=2.85円)以下の罰金が科せられることとされた。 一方、2月下旬には豚肉品質向上対策として、3種のハーブを混合し飼料に 添加することにより風邪や下痢を予防できるとした研究結果が同国調査基金に より示された。これらのハーブは従来の抗生物質と同等の効果が得られるとし て、肥育豚を市場に出荷するまでの一定期間抗生物質の代替として使用するこ とにより休薬期間を順守させることができると期待されている。 小規模農家の不安定な経営基盤 このようにさまざまな取り組みがなされる一方、生産者は、近年の需要の高 まりに伴い経営規模を拡大したため、主に北部地域では豚肉が供給過剰な状態 となっている。 政府による生産調整システムの不在は価格の大幅な変動を誘発し、その結果 大勢を占める経済基盤の弱い小規模生産農家は常に不安定な経営状態となって いる。また、急激に頭数を増加させることにより在来種の肥育素豚が不足し、 肥育農家は大手業者の高額な改良種の豚を購入せざるを得なくなっている。こ のような状況を解決するため、全国養豚協会は政府に対し、小規模農家に対し 低価格で種豚を供給するための基金造成の枠組みを整備するよう要望している。
【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 3月5日発】
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