ALIC/WEEKLY
31億ドルの追加災害対策の実施が決定 米国の2003年度(2002月10月〜2003年9月)の農業歳出予算法案は、連邦議 会での審議難航によりその成立が遅れていたが、2月20日、ブッシュ大統領の 署名により、ようやく一括歳出予算法として成立に至った。 これにより、2002年農業法(昨年5月制定)に基づく予算額を超える追加的 支出は認めないとするブッシュ政権の反対を押し切った形で、畜産分野を含む 干ばつ被害などに対する追加的な農家支援策が、約31億ドル(約3,660億円: 1ドル=118円)の予算規模で実施されることとなった。しかし、この増加分 は、2002年農業法の実施期間の最終年である2007年度から2013年度にかけて の7年間の環境保全対策費(保全保障計画:CSP)の減額によって相殺される ことから、いわば政権と議会の折衷案で決着したとも言える。 関係者は後年度予算へのしわ寄せを懸念 これについて、ファームビューロー(AFBF)やファーマーズ・ユニオン(N FU)といった農業団体は、今回の追加対策の実施を歓迎しつつも、本当に必要 な予算額としては不十分であり、また、後年度の農業予算にしわ寄せが及ぶこ とについても重大な懸念を表明している。さらに、CSPの創設を提唱したハー キン前上院農業委員長(民主・アイオワ)のように、これからも本来のCSP予算 額の満額復活に向けて取り組んでいくとする議員のほか、グッドレイト下院農 業委員長(共和・バージニア)のように、成立後間もない2002年農業法の議論 を蒸し返す悪しき前例にもなりかねないとして警戒する向きもあるなど、今回 の妥結は、関係者の間でしばらく尾を引きそうである。 畜産被害対策の拡充に加え、被災耕種農家への助成措置が新設 なお、今回決定された追加災害対策は、深刻な干ばつ被害に見舞われた2001 〜2002年を対象とするものであり、@昨年9月に決定された畜産補償プログラ ム(LCP:本紙通巻第549号参照)の拡充や、ALCPではカバーされない畜産農 家を対象とした2億5千万ドル(約300億円)規模の畜産支援プログラム(LAP) の実施に加えて、B作物保険ではカバーされない耕種農家などを対象に被害額 の一部を助成金として支払う作物災害プログラム(CDP)の創設を柱とするもの であり、ベネマン農務長官は、これら対策の速やかな実施に努めていく旨表明 している。 強い反発を呼ぶオーガニック畜産物の基準緩和条項 一方、本歳出予算法の両院協議会での協議の最終段階で盛り込まれた、オー ガニック(有機)畜産物の基準を実質的に緩和するための条項については、政 府、議会、関係団体などから強い反発を呼んでいる。これは、ジョージア州の 大手養鶏企業の意向を受けた同州選出のディール下院議員(共和)の提案によ るものであり、議論もされないまま、目立たず最後まで生き残ったものとされ る。 現行基準では、基本的に、オーガニック畜産物と認められるためには、その 由来家畜に対する100%のオーガニック飼料の給与が求められているが、「デ ィール条項」によれば、オーガニック飼料の流通価格が通常の非オーガニック 飼料価格の2倍を超えるような場合には、給与飼料が100%オーガニックでな くとも、その畜産物を「オーガニック」と表示することができるというもので ある。 しかし、すでに上下両院には、本条項の存在に気づいた超党派の議員によっ て、これを無効にするための法案が提出されており、最終的には、大きな対立 もなく本条項は葬り去られるとの見方が強い。
【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 3月5日発】
元のページに戻る