ALIC/WEEKLY
輸出国グループの主張を代弁する報告書
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は3月5日、マゼラン・プロジェクト・
フェーズ3を発表した。マゼラン・プロジェクトとは、豪州、米国、ニュージー
ランド(NZ)、メキシコ、カナダの主要牛肉輸出国5ヵ国による牛肉貿易自由
化に関する共同研究プロジェクトであり、牛肉貿易障壁の削減の利益を数値化す
るとともに、自由化の方法を見つけ出すことを企図としている。
プロジェクトは2000年に開催された5ヵ国牛肉会議から始まり、2001年に発表
されたフェーズ1では関税や関税障壁の削減の影響調査、2002年のフェーズ2で
は貿易歪曲的な生産補助金や輸出補助金の削減によって得られる利益に焦点を当
てるととともに、牛肉産業の構造改革の政治経済学について分析を行っている。
フェーズ3では、過去のレポートを体系的にまとめるとともに、世界貿易機関(
WTO)ドーハラウンドに向けて、米国、ケアンズ・グループ、EUなどの各国
提案が牛肉産業へ与える影響を分析している。
この報告によると、牛肉貿易の自由化によって輸出国は大きな利益を得ること
になり、すべての貿易障壁が撤廃されるならば生産者は年間8億5千万豪ドル(5
95億円:1豪ドル=70円)以上もの利益を得るとしている。
代表的な生産者団体である豪州肉牛協議会(CCA)は、この報告を歓迎し、
WTO交渉における豪州の主張を後押しするものと評価している。
マゼランレポートの要旨
○牛肉は世界貿易の中で最も保護された商品の1つである。
・EU、日本、韓国でOECD加盟国全体の牛肉生産者保護の87%を占める。
(EUだけで78%を占める。)
・WTOドーハラウンド農業交渉の中で牛肉は優先事項である。
○ケアンズ・グループや米国の提案は、EU提案などよりも牛肉輸出業国
に大きな利益をもたらす。
・主要な牛肉輸出国である南米、北米、オセアニアは、ケアンズ・グループお
よび米国の提案により、それぞれ23億米ドル(2,690億円・1米ドル=117
円)、30億米ドル(3,510億円)の利益を得る。
・南米の開発途上国にとって、ケアンズ・グループの提案は米国提案やEUの
提案より良い結果となる。
○WTO農業委員会のハービンソン議長の示したモダリティ案はケアンズ
グル−プや米国提案よりもEU提案に近いものである。
○一般的に、牛肉市場において、関税率の引下げや関税割当枠の拡大は、
貿易歪曲的な国内補助金や輸出補助金の削減よりも重要であるが、国に
よってそれぞれ状況は異なる。
・南米の輸出国にとって、EUの輸出補助金や国内補助の削減は、国境措置
の改善と同程度に重要である。
・米国やカナダの生産者にとっては関税の撤廃は最も重要である。
・豪州とNZにとっては、関税の撤廃と関税割当枠の拡大は最も重要なこと
である。
・改革の3つの柱-市場アクセス、国内支援、輸出補助金は相互に関連してい
る。
○牛肉産業を保護する政治経済学は変わってきている。
・EUの消費者には、共通農業政策の必要性に対する大きな意識の変化があ
る。
・牛肉産業保護の削減に対する抵抗は、フランスが最も大きいと考えられる
が、同国においても商業的圧力の下で保護は弱まっている。
○牛肉市場の改善は、消費者に大きな選択権を与える。
・貿易改革は、競争を高め、生産効率を改善し、より品質の高いより安全な
製品を提供し、納税者の負担を軽くする。
【シドニー駐在員 井上 敦司 3月12日発】
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