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口蹄疫の発生を想定した経済的影響を報告(NZ)


口蹄疫が発生した場合の影響を報告

  豪州では昨年6月に口蹄疫の発生した場合の影響についてのレポートが発表さ
れた(「海外駐在員情報」平成14年6月25日号参照)が、ニュージーランド(N
Z)においても2月中旬に同様のレポートが、NZ準備銀行(中央銀行)と財務
省によって発表された。これは、首相内閣府が、政府の「危機管理」演習の一環
として、口蹄疫が発生した場合のマクロ経済や財政上の影響を調査するよう依頼
したもので、NZで口蹄疫が発生した場合、家畜産業への直接的な影響だけでな
く、国全体への経済的な影響も大きいことを表している。


試算に当たってのシナリオ

  影響の試算に当たってのシナリオは、次の通り。

・口蹄疫は、北島において食品廃棄物から豚が感染し羊と牛に拡大、発生は北島
  でのみ。
・家畜に対してはワクチン接種が行われず、南島からの貿易の再開は比較的早期
  に可能となる。
・乳製品輸出への影響は小さいものの、食肉輸出については口蹄疫清浄国が6〜
  12ヵ月間にわたりNZ産食肉の輸入を禁止するため、NZの総輸出量は発生年
  度において8%減少し、翌年度までの累積で輸出額の累積損失は51億NZドル
  (3,315億円)に上る。
・NZ産食肉については、輸出が再開しても、「重大な評価損失」が起こり、輸
  出価格の下落が少なくとも4年間続く。


GDPや雇用に大きな影響 
  
  レポートにおける主な経済的な影響は次の通り。

・名目国内総生産(GDP)において発生年度に約60億NZドル(3,900億円:1
  NZドル= 65円)、翌年度までに累積で約100億NZドル(6,500億円)の損
  失が発生する。
・1万5千〜2万人の雇用が失われる。
・NZドルの対米ドル為替相場は20%も下落し、回復までに2年半を要する。
・発生翌年度において政府の税収がGDPの1.1%減少し、財政支出が同じく1.5
  %上昇するため、政府の歳入、歳出の両面で打撃を受ける。

 
食肉業界では「現実的」と評価

  食肉業界団体であるミート・NZは、「このレポートで予想される被害の大き
さには驚くには値せず、現実的な数値である」としている。また、輸出再開した
場合の口蹄疫清浄国に対する輸出価格の劇的な下落については、報告と同様の見
解を示している。


生産者団体は国民への注意喚起と評価 
 
  フェデレイテッド・ファーマーズ(農業者連合)では、「このレポートはすべ
てのNZ国民に対する注意喚起である」としている。今回の報告で明らかとなっ
た雇用やGDPへの影響は、政府がバイオセキュリティー(生物安全確保)を高
いレベルで維持する必要性を高めるものである。豪州では昨年9月に口蹄疫模擬
演習が実施された(「海外駐在員情報」平成14年10月1日号)が、NZにおいて
も昨年12月に規模は小さいながら同様の演習が行われている。同水準の家畜衛生
ステイタスを持つ豪州、NZにおいて、同じように口蹄疫を例に、経済的影響の
試算や発生時の迅速な対応を試験的に行った。しかし、外来の家畜伝染病の防止
には、やはり基本となるのは国民に対する水での進入防止強化の周知にあるよう
だ。




【シドニー駐在員 粂川 俊一 3月19日発】 
 
 
 

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