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6月中には民営化を実施
ベトナムの牛乳・乳製品の市場シェアの70〜75%(推定)を占めるベトナム 乳業公社(通称:ビナミルク)は、このほど政府から民営化を承認された。同 公社は、所管官庁である産業省に対し、3月中に民営化の詳細計画を提出する 予定であり、これが承認されれば6月中には株式を公開する予定である。同社 の現在の資本金は、1兆3,500億ドン(約103億円:1,000ドン=7.6円)であ り、民営化時には現行法の上限である30%に相当する4,050億ドン(約31億円 )までの外国資本を受け入れることができる。 同国は、国際通貨基金(IMF)の融資条件として、国内に多数存在する公社 の民営化促進を求められているが、雇用や民営化後の競争力などが問題とな って進展していない。同社は、民営化後も生き残りの可能な、数少ない優良 例といわれており、実現すれば過去最大規模の民営化事例となる。 輸出を原動力に増収・増益を継続 ビナミルク社の2002年の売上高は、前年比18.5%増の4兆7,000億ドン(約 357億円)となっており、今年はさらに15〜20%の増収を見込んでいる。総 収益は7千億ドン(約53億円)であり、売上高に占める収益率は14.9%の高 い水準を維持している。同社の売上高のうち約54%に相当する2兆5,600ドン (約152億円)は、アメリカ、中東諸国などへの輸出によるものとなっており 、輸出市場の維持・拡大が売上拡大のカギを握っている。同社は、品質の向 上と製造コストの削減により同社製品の競争力を高め、国内における市場シ ェアを90%程度にまで高める意向を示している。なお、収益のうち約60%に 相当する4,150億ドン(約32億円)は、国の財政に還元されている。 積極的な設備投資と品質向上対策 同社は、製品の低コスト維持のためには国産生乳の効率的な利用が不可欠 であるとしている。2002年には120億ドン(約9,100万円)を投じて、バルク クーラーを設置した集乳所を新設するなど集乳所の整備を図るとともに、生 産者乳価も出来るだけ高い水準を維持しているとしている。同社は直近10ヵ 年間に約1兆ドン(約76億円)を投入してホーチミン市近郊のドンナイ県、カ ントー県の2工場とホーチミン市内の2工場を最新鋭の施設に改修しているほ か、中部のゲーアン県などにも工場の新設を予定しており生乳処理能力の強 化を図っている。 また、生乳生産の中心地であるホーチミン市では、同市農業・農村開発局 と協力して、搾乳牛10頭規模のモデル農場を数ヵ所設置し、実際の作業を通 じて生乳の品質改善法の研修を行っている。同市およびその周辺各県では、 酪農の収益性が高いことから、技術を習得しないまま稲作から酪農へ転換す る農家が増えており、生乳品質向上の障害となっている。 民営化後、全量買上げの維持が課題 ベトナムの1人・1年当たりの牛乳・乳製品消費量は、全乳換算で6キログ ラム(2000年)程度のため、経済成長に伴う増加の余地が大きい。農業・農 村開発省は、農家の所得向上対策として、酪農開発を最重要課題の1つとし ており、2010年までに乳牛飼養頭数を 2000年の6倍以上の 約28万頭に拡大 し、生乳生産量を同 7倍の約34万トンにまで拡大することとしている。これ まで同国の酪農が急速に拡大してきたのは、公社としてのビナミルク社が生 乳の全量買上げを約束し、政府と一体となって酪農を振興してきたことによ るとみられる。同国の生乳生産者価格は、1キログラム当たり 3,600ドン(約 27円)程度となっており、オセアニアの乳価よりは高いため、今後予定され ている世界貿易機関 (WTO)加盟などにより国際競争の波にさらされた時に、 民営化された同社が生乳全量買上げを維持できるかどうかが、今後の同国の 酪農振興のカギを握ることになるものとみられる。
【シンガポール駐在員 小林 誠 3月19日発】
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