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米、原産国表示義務化に対する関係団体などの反応


USDA、ヒアリングを兼ねた説明会の実施を発表 

  ベネマン農務長官は5月5日、原産国表示(Country Of Origin Labeling:COOL)
について本年2月21日のパブリックコメント受付期限までに寄せられたコメントの
内容を精査するとともに、その実施に関するヒアリングと説明会を行うと発表した。
説明会は、4月下旬から6月下旬の間に、全米12州で開催されることとされている。

  2002年新農業法は、牛肉、豚肉、魚介類、腐りやすい農産物およびピーナッツに
ついて、小売段階での原産国の表示義務を課すこととしており、この実施について
は、2年間の任意のCOOL実施を経た後、2004年9月末まで規則を定め、義務表示に
移行することとしている。これに基づきUSDAは、2002年10月11日にCOOLの任意表示
のためのガイドラインを公表したところである(「海外駐在員情報(通巻551号)参
照」。今回の説明会は、2年後のCOOL規則制定へ向けた地ならしと調整を兼ねてい
ると思われる。

  
関係者の利害が反映されたコメント内容

  なお、関係団体などのコメント概要は次の通り。

・ファーマーズ・ユニオン(NFU:家族経営農家が会員)
    任意のCOOLは支持してきたが、USDAの案は現存するシステムをモデルとしてお
  らず、追加的なコストが生ずるとの問題がある。生産者に不当な記録の保持など
  を求めることのないより生産者に負担の少ないものとすべき。

・全国牛肉生産者・牛肉協会(NCBA)
    COOLの実施には賛成であるが、実施のための追跡、監査、検証および順守のた
  めのコスト負担が懸念される。義務表示の実施のためには、影響の評価や生産者
  と行政府の間での意見交換が必要。
  
・全米養豚経営者協議会(NPPC)
    COOL実施に当たり、養豚経営者の負担を最小限にできるような特段の配慮が必
  要。小売業者が法の確実な順守の目的で生産者に追加的なコストが発生する家畜
  の個体識別と追跡システムを要求することが懸念される。また、記録の保持など
  についての簡素化が必要。
  
・家畜市場組合(Livestock Marketing Association)
    COOLでは、生体から食肉を生産するところに記録の義務を課しているが、われ
  われはその様な業務を行っておらず記録保持の義務および監査の対象外である。
  現に存在する輸入家畜に対する輸入検疫証明書などのシステムを活用することで
  米国産との区別ができるのではないか。
  
・アルバートソンズ(全米3位のスーパーマーケットチェーン)
    われわれは、1,850以上の納入業者を抱え、彼らから購入する商品の原産地は
  30ヵ国以上におよぶ。牛肉部門では、12社から米国産のほかカナダ、アルゼンチ
  ン、NZ、ブラジルなどを原産地とする牛肉製品を購入している。現在の任意のCOOL
  の実施と2年後の義務化に対応するためには、記録保持システムなどの導入に延
  べ60万時間(人的経費積算で1,300万ドル(約15億6千万円))、設備投資に350
  万ドル(約4億2千万円)が必要となると見積もっており、義務化はわれわれに
  とって深刻な影響を及ぼすこととなる。
 
 
    
現行ガイドラインの義務表示規則への適用には高いハードル

  以上のように、関係団体などからは現行のガイドラインに対し原産国確認方法の
明確化やコスト負担への懸念などのコメントが寄せられている。COOLの義務化によ
り、「米国産」ブランドの確立による国内の生産基盤の強化などが期待されると考
えられるが、前述の関係団体などの反応を見ると、今後の規則制定までの道のりは
かなり厳しいものになると予想される。


  
◎ブッシュ大統領、米・シンガポール自由貿易協定(FTA)に調印
 ブッシュ米大統領とシンガポールのトン首相は5月6日、両国間の自由貿易協定
  に調印した。今後は貿易促進権限法(ファストトラック法)に基づき米国議会の
  承認を受けることとなっている。



【ワシントン駐在員 道免 昭仁 5月7日発】

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