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ブラジルにおける遺伝子組み換え大豆をめぐる情勢


暫定令131号に係る誓約書の提出期限を延長

  ブラジル連邦政府は9月26日、2003年に収穫され、生産者が独自に利用するため
に保管していた遺伝子組み換え(GM)大豆の種子の、2003/04年度の作付けへの利
用とその収穫物の販売を承認する暫定令 第131号(2003年9月25日付け)を官報に
掲載した(本紙通巻第597号を参照)。この中で、当該GM大豆の種子を作付けに利
用することを希望する生産者は、GM大豆の栽培や販売について10月26日までに、
政府が定めた規則に従い、責任を負う旨の誓約書に署名しなければならないとして
いた。 しかし、ブラジル政府は10月24日、多くの生産者にとって、この時期が大
豆の作付け作業に当たることなどから、同誓約書の期限内の提出が困難であるとし
て、同期限を12月9日に延長することを決定した。



全国の10州から1万1,199件の誓約書を受理 

  こうした中、暫定令第131号に関して、ブラジル農務省ジマルジオ事務次官が11
月10日に行った発表によると、同省はこれまで、全国の10州から計1万1,199件の
誓約書を受理し、その内訳は、リオグランデドスル州1万790件、マットグロッソ
州108件、パラナ州225件、バイア州16件、ピアウイ州22件、ミナスジェライス州
28件、マットグロッソドスル州1件、サンタカタリナ州、ゴイアス州およびサンパ
ウロ州がそれぞれ3件であるとしている。

  また、同次官は、誓約書の提出期限が間近に迫っているとした上で、暫定令に違
反した者は、公的な金融機関などから農業融資を受けることができないほか、1万
6,110レアル(約59万6千円:1レアル=約37円)以上の罰金が課せられることを
強調した。なお、誓約書の提出期限の再延長については、その意向がないことを明
らかにした。

 

GM大豆の不当な取り扱いに対し監視を強化

 一方、マットグロッソ州農務省代表部によると、同州の州境において、種子とし
て利用するために州外からGM大豆を持ち込もうとした数台の輸送車が差し押さえら
れたほか、数名の生産者が作付けを目的としてリオグランデドスル州産のGM大豆を
購入したことから、当該大豆が接収されたとしている。こうした中、ジマルジオ事
務次官は、主要な大豆生産地において、GM大豆の不当な取り扱いに対する監視体制
を強化するため、農務省と全州の農務局の技官を対象に監視体制の手法について検
討を行うとしている。



パラナ州政府からの要請などに対して発言

  また、同次官は、GM大豆「ラウンドアップ・レディ」の特許権を持つモンサント
社がロイヤルティの支払いを求めている件について、「ロイヤルティに関しては農
務省の権限を越えるものであり、われわれが見解を示すものではない」としている。
一方、現地報道によると、リオグランデドスル州農業労働者連盟(FETAG)は、現
在使用されているGM大豆はもともと外国から持ち込まれたものであり、出所が明ら
かではないことなどから、生産者が同社に対しロイヤルティを支払う必要はないと
の声明を発表している。

  さらに、同次官によると、国内第2位の大豆生産州であるパラナ州政府が同州全
域を暫定令第131号の適用外と認めるよう農務省に対し要請を行ったことについて、
同暫定令に関して同州の生産者から225件もの誓約書が提出されたことを踏まえる
と、その要請に応えることは困難であるとしている。

  パラナ州知事は10月27日、州内で食料、家畜用飼料に向けられるGM作物の栽培、
輸入、加工および販売などを禁止する条例に署名したが、今後、同州政府が、連邦
政府による暫定令に基づきGM大豆の作付けを希望する生産者に対しどのように対処
するのか注目される。



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 11月12日発】 


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