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GM大豆の作付・販売に関する暫定令が発令 ブラジル政府は9月26日、2003/04年度の遺伝子組み換え(GM)大豆(以下、 「GM大豆」という)の作付けおよび販売に関する暫定令第131号(2003年9月25 日付け)を官報に掲載した。 ブラジルでは、GM大豆の商業的栽培を解禁する司法の判決はまだ下されていな いが、現政権は今年3月27日、同国で数百万トンのGM大豆が栽培されている実態 を踏まえ、2003年に収穫された GM大豆の販売を、2004年1月31日を期限として 認めた暫定令第113号(同暫定令は2003年6月13日に法律化された。また、販売 期限は、行政命令によって60日間の延長が可能となっている)を公布していた( 本紙通巻第573号を参照)。同暫定令では、2003/04年度以降の GM大豆の栽培を 全面的に禁止していたが、GM大豆の栽培が広く行われているとされるブラジル南 部のリオグランデドスル州の州政府は、2003/04年度の大豆の作付け期を前に、 連邦政府に対し、GM大豆の栽培に関する最終的な取扱の指針を強く求めていた。 2003/04年度のGM大豆の作付・販売を条件付きで承認 こうした中で、発令された暫定令第131号の概要は次の通りである。 @ 2003年に収穫され、生産者が独自に利用するために保管していたGM大豆の 種子を、2003年12月31日を期限として、環境アセスメントの実施なしに、 2003/04年度の作付けに利用することが認められる。しかし、当該種子の生 産州以外での作付けや販売は禁じられる。 A @の種子より生産されるGM大豆を、2004年12月31日を期限として、販売す ることが認められる。なお、当該期間までに販売されなかった当該大豆は焼 却処分されなければならない。 B ブラジル農務省は、GMO(遺伝子組み換え体)の存在が認められないことが 証明された地域を同暫定令の対象外とすることができる。 C 2003年に収穫されたGM大豆の種子を今年の作付けに利用することを希望す る生産者は、GM大豆の栽培や販売について、9月26日から30日以内に、政府 が定めた規則に従い、責任を負う旨の誓約書に署名しなければならない。 D Bを除く地域に所在し、Cの誓約書に署名しないGM大豆の生産者およびブ ラジル農務省が信任する認証機関が発行する非GMOの証明書を提示しない非 GM大豆の生産者にあっては、政府からの税制優遇措置や公共の金融機関から の融資を受けることはできない。 E GM大豆の栽培が環境および第3者に被害を与える場合、当該生産者は賠償 責任を負う。この賠償責任は、GM大豆を購入した者に対しても適用される。 F 環境保護地域、インディオ居住地、環境省が生物多様性の保護を図るため の優先的地域と指定した地域などにおける、GM大豆の栽培は禁じられる。 G 本項の履行を監視するため、関係各省や環境問題担当機関により構成され る追跡調査委員会を設置する。 ロドリゲス農相による暫定令に対する見解 現地報道によると、暫定令第131号により今年に限り GM大豆の作付けが承認さ れた理由として、公には非GM大豆の種子が不足しているためとされるが、ロドリ ゲス農相は9月29日にサンパウロ市で行われた食用大豆に関する国際セミナーに おいて、「(GM大豆の商業的栽培を解禁する司法の判決が下されていない中で) リオグランデドスル州の生産者が大挙してGM大豆を作付けする場合、これを検査 し、処罰する体制が十分ではない」ことを挙げている。また、「政府としては、 GM大豆の取扱については、暫定令ではなく、バイオ安全に関する法律によって規 定することを望んでいたが、同法案に対する政府内の一致した意見が得られず、 今年の作付け前に法律化することが困難であったが、同法案は10月末までには国 会に提出される予定である」と述べている。一方、司法当局の反応として、ブラ ジル連邦判事協会の会長は、今回の暫定令の発令は、環境アセスメントの実施な しにGM大豆の商業的栽培を認めないとする司法の判決に反しているとして、政府 の対応を非難した。このような状況の中、GM大豆をめぐる情勢が今後どのように 展開していくのか、その成り行きが注目される。 【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 10月1日発】
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