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5カ年計画中間評価と2004年予算措置
今月末に議会で審議される予定のマレーシア経済発展5カ年計画(第8次マレ ーシアプラン(2000〜2005年))の進捗状況について、9月中旬、政府によりそ の概要が示された。農業分野では別途策定されている国家農業計画(第3次:1998 〜2010年)に基づき当プランとの整合を図りながら、自給率の向上と近代化を達 成するとされており、同国農業省によると、農産品の輸入総額は年間約130億リン ギ(3,770億円:1リンギ=29円)であるのに対し輸出額は60億リンギ(1,740億 円)となり貿易収支は赤字となっている。これを、2010年を目標に貿易収支を20億 リンギ(580億円)の黒字にまで引き上げたいとしている。中でも、畜産分野では下 記に示す取り組みを行うことによるとされ、2004年予算措置の中にもその内容が 盛り込まれている。 1 大規模複合経営の推進 第3次国家農業計画では、当初約20年で達成予定であったが、同国を取り巻 く社会・経済情勢の変化に対応し2度の見直しを経、従来からあるアブラヤシプ ランテーションに畜産を組み込んだ循環型大規模複合経営を推進することとされ ている。これは同国で農業経営規模拡大の障害となっていた土地不足の問題を解 消するとともに、反すう家畜との複合ではアブラヤシ農場と豚・鶏飼養を組み合 わせることで、下草処理やアブラヤシ残さが飼料として再利用できるなど様々な メリットがあるとされている。しかし、肉牛との複合の場合はアブラヤシ農場に 放牧したままでも問題はなくても、酪農との複合の場合、搾乳の都度牛を集めな ければならないなど組み合わせによっては技術面での課題が浮上する場合がある。 なお土地利用という点では、2001年から未利用地報告システム(ILIS) が実施 され、これにより私有地・国有地併せて約40万ヘクタールの利用可能地が報告さ れており、今後ILISの報告に基づき効率的な土地利用が行われることが期待され る。 2004年予算要求では、8億8,500万リンギ(256億6,500万円)が基本農業対策 費として割り当てられたほか、経営体の新規参入や農業に対する投資の促進を図 るため税制上の各種優遇措置を行うとされた。 2 ハラルハブ構想 第3次国家農業計画の中ではイスラム教徒を念頭に置いたハラル食品(イスラ ム教の教えに則り処理された食品)ハブ化構想についても述べられており、セラ ンゴール州やネグリ・センビラン州ではハラル製品製造団地などの整備が着手さ れ始めている。 3 小口短期融資制度による支援 一方、零細経営については各地域で推進される一村一品運動の一環として、マ レーシア農業銀行を窓口にマイクロクレジットと呼ばれる小口の短期融資制度に よる支援を図るとされた。これはイラク戦争やSARSに対する景気対策として今年 5月にマハティール首相により発表された中小企業全般に対する融資制度の一環 で、1件当たり融資限度額を2万リンギ(58万円)として中小企業や個人事業者 を対象に融資が始められたもので、開始当初は手続き上の問題が生じ、新規申し 込み受付を一時停止するなど混乱したものの、農業分野では6月の受付開始以来 2万8千件の申し込みを受け付け、この融資総額は現在約4億2千万リンギ(121 億8千万円)となっている。主な申込事業者は養鶏業、漁業・養殖業、食品製造・ 販売業者などとなっている。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 10月22日発】
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