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干ばつが豪州畜産に与えた影響は顕著


今後も肉牛・牛肉価格は高値で推移

  豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は8月18日、豪州の肉牛・牛肉産業に関する
中間見直しを発表した。干ばつの影響で飼養頭数が減少したことなどを背景に、肉牛
・牛肉価格は高値で推移すると予測している。

  先ず、供給面について、全国の肉牛飼養頭数は干ばつのために2002/03年度(7〜
6月)に200万頭減少(前年同期比7%減)し、2003年6月末で2,600万頭と推定し
た。多くの地域で続く繁殖環境の悪化は、2003/04年度まで牛群の再構築を妨げるた
め、牛肉生産量は2003年に8%減少し、2004年にさらに減少する可能性が高いとみ
ている。

  このような供給の減少と豪ドル高の組み合わせは、@北米向けの牛肉輸出を抑える
A日本と韓国での販売拡大を制限するB他の輸出市場での増大を妨げる−可能性が高
いとしている。

  次に、肉牛と牛肉の価格については、大部分の市場で、今後3〜5年は高値で推移
すると見込んでおり、干ばつ下においても牛群を維持し販売する肉牛を持つ生産者に
とって、今後数年は高い収入を期待することができるとしている。

  このような見通しのカギを握る要因として、@日本と韓国からの需要増A堅固な国
内需要B北米からの牛肉供給の減少C今春における干ばつの緩和の見込み−を挙げて
いる。

  ただし、これを制限する要因としては干ばつの長期化と豪ドル高があり、短期的に
も、干ばつによって牛群を売り払うことを強いられた生産者と、肉牛供給の確保に苦
闘している食肉処理加工業者にとって厳しい状態が続くとしている。

  加えて、国内市場においても牛肉の小売価格は、供給の減少傾向が継続するために
高水準で推移し、その結果、消費を減少に導く可能性が高いと懸念している。




2002/03年度の生乳生産は前年度比8.4%減
 
 一方、デイリー・オーストラリア(DA)は8月中旬、2002/03年度の豪州の生乳
生産量は1,032万キロリットルで、主要な酪農地域での干ばつの影響により、過去最
高を記録した2001/02年度の1,127万キロリットルと比較して8.4%減少となったと
発表した。

  干ばつによって最も影響を受けた州は、ビクトリア(VIC)州とタスマニア(T
AS)州の2州で、生産量はそれぞれ11.1%、12.8%減少した。最大の生産州であ
るVIC州は全国の生乳生産の63.8%、TAS州は同じく5.7%を占め、特にVIC
州の生産量は、前年度から80万キロリットル以上も減少した。2番目の生産州である
ニューサウスウェールズ(NSW)州でも生産量は3.1%減少し、クインズランド州
も3.4%減少した。その中にあって、南オーストラリア州と西オーストラリア州につ
いては、この2州合わせて全国の生産量の11.0%しか占めないものの、それぞれ2.5
%、1.6%と生産量が増加した。

  DAでは、「生産量の8.4%の減少は、干ばつの深刻さを考えれば意外なことでは
ない」とした上で、干ばつによる飼料と水の不足のために、酪農家は大幅な経費増に
直面し、加えて、豪ドル高の影響で収益が下がったことから、「産業全体にとって非
常に困難な年であった」と総括している。

  加えて今後について、「2001/02年度の生産レベルに回復するには数年を要するが
、気候状態の回復によって、2003/04年度が酪農産業にとって良い年であることを信
じる」と楽観的というよりも祈るようなコメントが印象的である。




干ばつの影響からの脱却は数年後

  NSW州では、干ばつ指定地域が再び増加し州の8月上旬に89%となるなど未だ
局地的にその影響下にある地域も少なくないが、豪州を襲った干ばつは徐々に緩和
する方向に見える。

  これまで肉牛・牛肉産業、酪農ともそれぞれの生産基盤が受けた干ばつの影響は
大きい。加えて、輸出依存型産業であるために豪ドル高による輸出競争力の制限要
因が足かせとなり、仮に干ばつが終息したとしても、これまで受けた干ばつの影響
から脱却するには数年を要するとみられている。




【シドニー駐在員 粂川 俊一 9月4日発】   

 
 

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