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米国ベネマン農務長官の最近の情勢への所感


カンクンWTO閣僚会議は中間評価の場 

  ベネマン農務長官は9月4日、同月10日からメキシコのカンクンで開催される第
5回WTO閣僚会議に先立ち記者懇談会を開催した。同長官は、国内需要を上回る
国内生産を振り向けるためにも海外市場へのアクセスの改善が重要であることを強
調するとともに、今回の閣僚会議を前回の会議で採択されたドーハ開発計画による
農業に関する協議の中間評価の場と位置付けた。

  先になされた米国・EU共同提案については、7月にカナダのモントリオールで
開催されたミニ閣僚会議での参加国の要請にこたえ、交渉の進展を図るために柔軟
性を示したものとした。

  また、この記者懇談会で米国通商代表部(USTR)のジョンソン首席農業貿易
担当は、WTO一般理事会議長案については、大きな輸出市場として米国が関心を
示す途上国の市場アクセスの改善が不十分であるとの懸念を示した。輸出市場の開
放により、さらなる国内補助の削減等が可能となるとして、引き続き、輸出補助金
の撤廃、貿易歪曲的な国内補助金の削減、市場アクセスの改善という3つの課題を
追求していくとした。カンクンでは、ドーハで農業について加盟国が合意したもの
に即した進展を継続する必要があり、これが具現化されたWTO一般理事会議長案
に対して、2005年1月1日の交渉期限に間に合うよう具体的な数値を埋める等の前
進が必要だとした。



米国はOIEに対しBSEに関するより現実的な手法の検討を要請

  ベネマン米国農務長官は8月25日、9月1日よりカナダからの30カ月齢以下の牛
由来の骨なし部分肉等を条件付きで解禁することに関連し、「この病気に関しては
、科学的な進展に即して判断の基準を更新していく必要があると考える。国際獣疫
事務局(OIE)にBSEについて、その貿易に与える影響を考慮し、BSEの発生国の牛
肉輸出再開についてより現実的なリスクに基づいたルール作りを検討するよう、北
米自由貿易協定(NAFTA)のパートナーであるカナダ、メキシコとともに要請した」
とした。

  また、同長官によれば、生体の輸入解禁については、30カ月齢未満については実
質的にBSEのリスクがないことから、この規制の検討をリスクアセスメントを含め
実施しており、所用の時間を要する。なお、30カ月齢以上の解禁については見通し
を有していない。



関税の緊急措置に引き続き懸念

  ベネマン農務長官は、今回の生鮮・冷蔵牛肉の関税の緊急措置の発動は、BSEに
よる消費減少分の回復による人造的な消費の増加によるものである。消費は通常の
水準まで回復したが従来の消費量を超えている訳でもなく同措置を発動することは
まったく正当化されないとして、今後も日本政府に強力な要請を続けていくとし、
9月3日の亀井農林水産大臣との会談でも措置の撤回を求めた。



◎ 始動した対日輸出向けBEVプログラム

  米国農務省は、対日輸出向けに米国内でと畜された牛肉のみを含むことを証明す
る牛肉輸出証明(Beef Export Verification(BEV))プログラムの承認を行
った者の名称等を公表しているが、9月4日現在で、主要なパッカーや日系企業を
含む45社74施設が承認された。

  なお、加工品については、原材料の仕入れから製品の出荷までに時間を要するこ
と等から、10月1日までBEVプログラムの実施を猶予することが日米の家畜衛生当
局間で合意された。


【ワシントン駐在員 犬飼 史郎 9月4日発】

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