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ボリビアとの国境付近で口蹄疫発生 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は9月5日、同国で口蹄疫 発生が確認されたことを国際獣疫事務局(OIE)に報告した。発生は同国北部 のサルタ州内、ボリビアとの国境40キロメートルに位置する農場に飼養されてい た豚で、発症頭数は18頭、SENASA中央研究所の診断の結果、ウイルスは血 清型Oとなっている。 SENASAは8月30日、ボリビアおよびパラグアイで7月に発生した口蹄疫 (海外駐在員情報通巻587号参照)のため、国境から25キロメートルに設定された 警戒地帯およびその外側10キロメートルの監視地帯から少し離れたサルタ州サン マルティン郡タルタガル市にある市営と畜場近くの農場で、口蹄疫の発症を疑う 豚を前日の29日に確認し、OIEにも本件について報告したと発表していた。 SENASAの対応 またSENASAは31日のプレスリリースで、「国際ルール等に基づいて以下 のような万全の対策を講じた」と強調した。 ○ 当該市営と畜場の閉鎖と当該農場内のすべての豚の移動禁止 ○ SENASAおよび国境警備隊による当該市営と畜場の管理、予防のためそこ に出入りするすべての車輌、人、動物に対する消毒の実施 ○ 当該市営と畜場および当該農場から直径10キロ範囲内にいる牛およびその他感 受性動物(豚、羊、ヤギ)への予防接種の実施(9月5日には、発生地点から 半径13キロメートル以内の感受性動物すべての移動制限およびワクチン接種を 公表した) ○ 家畜移動許可書(DTA)等関係書類による疫学的追跡調査の実施。 ○ 同地帯における病理学的検査の実施。 ○ 疑似患畜の見つかった地点から12キロメートル離れたアグアライ(Aguaray) 市と30キロメートル離れたサルバドールマッサ(Salvador Mazza)市のと畜 場を予防のために閉鎖、同と畜場周辺の感受性動物に対する予防接種の実施 ○ サンマルティン(San Martin)およびリバダビア(Rivadavia)郡内の家畜の 移動禁止(9月5日には、オラン(Oran)、サンタビクトリア(Santa Victoria) 、イルジャ(Iruya)郡を追加し、90日間の期限とした) ○ 主要な道路における消毒と移動を管理するための検問所の再配置 周辺国やEUの対応 ブラジル農務省は9月1日、アルゼンチンと国境を接するリオグランデドスル 州とサンタカタリナ州の国境監視を強化したが、口蹄疫発生が確定していないた め厳しい措置は控えているとコメントしていた。しかし5日の確定情報により、 アルゼンチン全土から牛、水牛、豚、羊、ヤギの食肉等についての輸入を一時停 止した。 チリは、7月のボリビア等での口蹄疫発生に対し、すでにサルタ州リバダビア 郡、ファルモサ州ラモンリスタ郡からの食肉等の輸入を停止していたが、9月5 日からアルゼンチン全土の食肉等の輸入を一時停止した。 また、EUはチリと同様の措置を講じていたが、9月9日にSENASAが報 じたところによると新たにサルタ州サンマルティン、オラン、サンタビクトリア 、イルジャの各郡からの食肉等の輸入を一時停止した。なお、これらの地域は家 畜の飼養密度が低くほとんどが自家消費用で、輸出向けに登録された食肉処理施 設がないことから経済への影響はほとんどないと併せて報じている。 なお、アルゼンチンの国際的な衛生ステータスは、南緯42度以南は口蹄疫ワク チン不接種清浄地域、以北はワクチン接種清浄地域であったが、今回の発生で南 緯42度以北のステータスは留保されている。 ◎ SENASA新総裁が就任 こうした中、9月2日にSENASAの総裁として同組織の副総裁を務めたこ ともあるアマジャ氏が就任した。 SENASAは2001年の口蹄疫発生時に対策を緊急に進めるべく総裁の決定権 を拡大していった。しかし最近まで口蹄疫が沈静化していたため、総裁の権限に 対して強い批判が高まっていた。これに対しアルゼンチン農牧水産食糧庁(SA GPyA)等が権限の制限を実施しようとしたことから、前任のカネ総裁は、権 限の制限は職務遂行上不適切であるとし8月21日に辞任した。総裁の主な決定権 の制限とは、衛生プログラムなどの施策立案にあたり農業団体等の代表からなる 運営審議会に諮り了承されたものをSAGPyAが承認し、さらにそのプログラ ムの実行に当たっては運営審議会の承認が必要になったことである。こうした中、 口蹄疫を疑う豚が見つかったため、SENASAの今後の対応が注目される。 【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 9月10日発】
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